レイモンド・ムラタヤの頭の中には、大きな試合のことしかない。
28歳のムラタヤは、派手にアピールするタイプではない。しかし、対戦相手を名指しで挑発してこなかった理由の一部には、まだ自分の立場が確立されていなかったこともある。だが、それも数週間後には変わるかもしれない。
5月10日、サンディエゴのペチャンガ・アリーナにて、ムラタヤ(22勝0敗、17KO)はIBFライト級暫定王座を懸けてザウル・アブドゥラエフと対戦する。
試合はまだ行われていないが、ムラタヤはすでに「勝者」のような振る舞いを見せている。
それを“慢心”と呼ぶ人もいるかもしれないが、ムラタヤ本人に言わせれば、それは単なる「自信」だ。言葉の選び方はともかく、カリフォルニア出身の彼はすでに視線をその先に向けている。
ムラタヤが語るのは、よくある無難な防衛戦の話ではない。何かを提供できない相手と交渉の場を持つこともない。予定通りに事が進めば、ムラタヤには多くの選択肢が広がることになるだろう。だが、その中でも最も注目している名前がある。
「一番理にかなっているのはキーション(・デイビス)だよ」と、ムラタヤはショーン・ジッテルのインタビューで語った。「彼はトップランク所属だし、俺もトップランクにいる。」
ムラタヤがそう語るように、デイビス側も同じ思いを抱いている可能性が高い。オリンピック銀メダリストであるデイビスは、これまでたびたびムラタヤを「注目している相手」として名前を挙げてきた。ムラタヤが暫定王座を獲得すれば、その計画を現実のものとする動機はさらに強まるだろう。
もちろん、まずはキーション・デイビス(13勝0敗9KO)が、6月7日に行われるエドウィン・デ・ロス・サントスとの一戦に勝利しなければならない。
一方、ムラタヤにとってもアブドゥラエフ戦で足元をすくわれるようなことは絶対に避けなければならない。デイビスやシャクール・スティーブンソン、あるいは他のライト級トップ戦線の選手たちとの対戦について話し続けたい気持ちはあるものの、彼の視線は常に“目の前の相手”に向けられている。
「彼を甘く見るつもりはない。試合では何が起こるか分からないからね。100%の準備をして臨むよ。相手が何を出してこようと、すべてに対応できる準備はできているんだ。」