パット・ブラウンは、もう十分に語ってきた。
ここ数か月、25歳のマンチェスター出身のブラウンは、根気強くも穏やかな姿勢でプロモーション活動に参加してきた。だがついに――2024年のオリンピアンが、ようやく語るべき「試合」を手にした。
ブラウンはクルーザー級でプロデビューを果たす。相手はアルゼンチンのフェデリコ・グランドーネ(7勝4敗2分、3KO)。試合は金曜の夜、オルトリンガムのプラネット・アイスで行われる。
その瞳の奥にはこれまでと違う鋭さが宿り、言葉には新たな緊張感と闘志がにじむ。
「10オンスのグローブをまだつけたことも、パンチを打ったこともないんです」とブラウンは『ザ・リング・マガジン』に語った。
「ジェイミー(ムーア/トレーナー)が、“ジムで試してみるか?”って言ってきたんですけど、僕は“試合の日まで待ちたい”って答えました。
ナックルが革に当たる感触を味わいたいんです。どれだけ小さいのか、自分の拳で確かめたい」
昨年11月、パット・ブラウンが自身の将来をマッチルーム・ボクシングに託すと発表したニュースは、寒さが厳しい冬の夜にもかかわらず、マンチェスター中心部に約300人ものファンを集めた。質疑応答と正式発表のためだけに、これほどの人が詰めかけたのだ。
そこから広報活動は一気に加速した。
以降、ブラウンは公開ワークアウトでミット打ちを披露し、興行の中継では解説まで務めた。プロモーションビデオ、プレスリリース、そして数えきれないほどのインタビュー――そのすべてに応じてきた。
だが彼は、そうした新たな経験のすべてを自然体で受け入れながら、プロ仕様へと自らをアップデートする本来の作業――すなわち、パワフルで攻撃的なスタイルをプロ向けに微調整するという“本業”にも、着実に取り組んできた。
昨年6月、オリンピックのリングでブラジルのケノ・マシャドと向かい合って以来、パット・ブラウンは誰かの目を真正面から見つめることはなかった。だが今回、フェデリコ・グランドーネの視線と交差した瞬間、彼の中で“あの感覚”が一気に甦った――懐かしく、そして歓迎すべき感情だ。
「間違いなく100%感じました。相手の目を見るときって、すごく純粋で自然なもので、目は絶対に嘘をつかないんですよ」とブラウンは語った。
「普段なら、相手と睨み合うのはリングの中で、実際に試合直前のことなんです。だから昨日、フェイスオフしたときはちょっと可笑しかったですね。
集中しようとしても、そのあとすぐにメディア対応や写真撮影が入ってきて、また集中し直さないといけない。そういうのは初めての経験でしたけど、楽しめましたし、これもプロの世界の一部なんだなって思います」
現在の英国ボクシング界では、チケットを売れる新星の登場が強く求められている。そしてマッチルームは、パット・ブラウンをその存在として抜擢し、トップ戦線への“加速ルート”を明確に用意しているようだ。
大々的なプロモーションは、パット・ブラウンを「飾り気のない、庶民派の男」として描き出すことに徹してきた。鐘や太鼓はいらない――そんなスタイルで、彼を“国民的人気ボクサー”へと押し上げようという狙いだ。
キャリア初期からこれほどまでに手厚いサポートを受けられることに、ブラウン自身も明らかに感謝している。だが、金曜夜のデビュー戦で何が見られるかをまたひとつインタビューで語り終えた後、彼が心の中でそっと安堵のため息をついていたとしても、誰も責めることはできないだろう。少なくとも今は、ようやく「拳」で語る時が来たのだ。
「今は完全に戦闘モードに入ってるし、もうやるべきことは分かってる。俺はそういう人間なんです。“派手さ”とかは、正直言って俺のスタイルじゃない」とブラウンは語る。
「もちろん、プロとしてそれも一部だってことは分かってるけど、俺はただリングに上がって、試合を見に来てくれるファンに“求められてるもの”を見せたいだけ。いきなり深い場所に放り込まれた感じだけど、明日の計量さえ終われば、やるべき仕事はひとつだけ――金曜日の試合に集中するだけです」
「これまでずっと準備だけが続いて、なかなか対戦相手も決まらなかった。でも、ようやく試合まであと2日。いよいよ現実になった。体重も順調に落ちてるし、気分もいい。今の俺は、完全に“標的を破壊する”モードに入ってるよ」