ニック・ボールは、自身のトレーニングスケジュールの中心に据えているクロスフィットが、無敗のまま世界フェザー級王座にたどり着く道を切り拓いたと信じている。
現在28歳のボールは、
「ザ・リング・マガジン」のフェザー級(126ポンド)ランキングで3位に位置しており、WBA王者として新たに同階級へ乗り込んできた
サム・グッドマンを相手に、3度目の防衛戦に臨む。
今回の試合は、ボールにとってサウジアラビアの首都リヤドでの3戦目となる。初めて同地を訪れたのは2024年3月、当時のWBC王者レイ・バルガスをあと一歩のところまで追い詰めた試合だった。その夜、判定はスプリット・ドローに終わったが、3カ月後にキングダム・アリーナへ戻ったボールは、もはや誰にも止められなかった。
2024年6月1日、ボールはレイモンド・フォードとの激戦をスプリット・ディシジョンで制し、王座を獲得。その後はリバプールで2度の防衛に成功している。
“レッキング”・ボールの異名を持つ28歳のボールは、現在のボクシング界で最もフィジカルの優れたファイターの一人として頭角を現しており、いまや英国唯一の男子世界王者となっている。バルガス戦やレイモンド・フォード戦のようなハイペースな試合でも、ボールは難なくフルラウンドを戦い抜いてきた。また、ルドゥモ・ラマティを12ラウンドで、ロニー・リオスとTJ・ドヘニーをそれぞれ10ラウンドでストップし、終盤にも強打を維持できることを証明している。
そして現在、彼はクロスフィットというトレーニング手法が、いかに自分の身体をボクシングの過酷な環境に耐えうる“防弾仕様”に仕上げてくれたかを語っている。クロスフィットは2000年前後に登場し、世界的に人気を博しているトレーニングメソッドだ。
「俺のトレーニングスタイル――ストレングス&コンディショニングコーチのトム・クリスティと一緒に“ピーク・パフォーマンス”でやってる内容は、クロスフィットジムのメニューなんだ」とボールは語る。
「すべてがファイトに特化した内容で、格闘に向けたプログラムとして構成されているんだ。それ以上のものも含まれてる。トムのやり方は、本当に信じられないくらい凄いよ。俺たちはクロスフィットの大会にも出ていて、ジムには優勝したときの国旗がたくさん掲げられてる。他にあれだけ表彰台に立ったジムなんて、そうそうないと思う。マジでクレイジーだよ」
「俺にとっては、ああいうタイプのトレーニングが一番合ってる。人それぞれ、好みのメニューや自分に合ったやり方ってあるだろ。でも俺にはこれが完璧なんだ。キャンプ中でもオフでも、これからもずっと続けていくつもりだよ」
「ライフスタイルなんだよな、要は。一年中続けるものなんだ。6〜8週間とか12週間のキャンプだけの話じゃない。プロとして一年を通して身体を作り、努力を積み重ねていく。ものすごく大きな助けになるよ。次の戦いに向けた準備なんだ。終わりなんて、どこにもないからさ」
クロスフィットをはじめとする多様で機能的なストレングストレーニングは、過去20年でボクシング界でもますます普及してきた。たとえば、3階級制覇王者のロバート・ゲレーロは、特にクロスフィットの強い支持者として知られている。
だがボールにとって、トレーニングとは突き詰めれば「地道な努力」に尽きる。
「6歳のときにボクシングを始めて以来、常に全力を尽くしてきた」とボールは語る。「でも、時が経つにつれて、全力を出し切って努力する以外の選択肢なんてなくなるんだ。なぜなら、それが報われるってわかってるから。俺自身がその証明だよ。自分をそこまで追い込んだからこそ楽しめるようになったのか、それとも元々そういう性格なのか、自分でもよくわからないけどな」
「たぶん、それが俺の性分なんだと思う。何をやるにしても、100パーセント以上を出し切る――それが俺という人間なんだ。ものすごく強い労働意識というか、努力することが身についてる。そういうのは、きっと生まれつきなんだと思うよ」