スコットランド・グラスゴー発――
ナサニエル・コリンズは、初のメインイベントを前に掲げられたポスターで「次代のスコットランド王」と称されるが、フェザー級での
クリストバル・ロレンテ戦では、終盤にかけて狡猾さ、そして何より足のスタミナを欠き、12ラウンドの末にスプリット・ドロー(判定引き分け)に終わる。
採点は、それぞれ115–113で両者に1枚ずつ、残る1人のジャッジが114–114をつけたことで、36分の戦いの末に勝敗は分かれなかった。
コリンズは、この内容では世界タイトルを狙うには不十分だったと認め、7ラウンド以降にスペイン人を仕留められなかったことを悔やみつつ、両者とも即時再戦に前向きな姿勢を示した。
29歳のコリンズは前戦でリー・マクレガーを短時間で片付けたが、今回は元スパーリング・パートナーとの国内戦ではなかった。
今回の相手は無敗の欧州王者クリストバル・ロレンテであり、
スティーブン・フルトンの世界タイトル挑戦権を懸けたWBC最終決定戦でもあった。
「正直、あまり感じなかった。理由は単純で、ずっとこの立場に立ちたいと自分から望んできたから。キャリア初期にジョーニーマンとは戦いたくないと言い、国内戦も一通りこなして“もう次に進まないと”と言ってきた。だから、自分で望んだ舞台でプレッシャーを感じるなんて筋が通らない。もし自分がこのレベルにふさわしいと思っていなかったら、スコットランドに大舞台を呼び戻そうなんて思わなかったはずだ」
――初のメインイベントを前に、コリンズはBoxingSceneの取材でそう語った。
そして、これが最後のメインイベントにはならない。
無敗のコリンズ(17勝0敗1分、8KO)はゴングと同時にギアを上げ、ロレンテを切り崩しにかかる。序盤1分でスリップしたスコットランド人に会場・ブレイヘッド・アリーナが息を呑む中、ロレンテ(20勝0敗3分、8KO)は冷静にカウンターを返し、後ろ足から鋭いパンチを当ててスペイン陣営を沸かせた。
コリンズは2連打、3連打をヒットさせて主導権を握り、ロレンテが待ち構える展開が続く。第2ラウンド序盤も同様で、ロレンテはややバランスを崩しながらも耐え、コリンズは頭部とボディに狙いを散らしながらチャンスを伺う展開となった。
第3ラウンドもじわじわとした展開で始まり、コリンズがビッグアッパーをヒットさせた後、互いに右を交換してラウンドを締めくくった。このあたりから激しい打ち合いを期待したいところだったが、実際はインファイトでのポジション取りの攻防が続き、コリンズは焦りのないペースでロレンテに小刻みなパンチを当てるにとどまり、終盤になってようやく両者が手を出し合った。
そのわずかな勢いに乗ったのか、第5ラウンドではロレンテが試合で最も良い内容を見せる。プレッシャーを強め、前進してコリンズに高いテンポでの対応を強要し、右ストレートのカウンターをクリーンに決めてみせた。
第6ラウンドは互いに主導権を奪い合う場面が増えたが、依然としてコリンズが攻め手として優勢。リング中央で打ち合い、互いに見せ場を作る。コリンズはロレンテを追い詰めた際、防御を捨てて攻め急いだのが仇となり、あと一歩でダウンを奪える場面でも、ほんの少し距離を取って冷静にパンチを選べばよかった。
予想通り、第7ラウンドは激しいラウンドの反動でペースが落ち、ロレンテは再び慎重なスタイルに戻る。コリンズは省エネでショート、ミドルレンジから得点を重ねていく。
この時点でリードしていたコリンズに対し、ロレンテが勝機を見いだすには接近戦で仕掛け、油断した相手を崩すしかなかった。とはいえ、コリンズのパンチには依然としてKOの危険が潜んでいた。
第9ラウンドは既視感のある展開。コリンズがジャブを突き、ロレンテが終盤にかけて2連打、3連打で反撃。ラウンド終盤の印象を重視するジャッジに対し、しっかりアピールする。観客の声援も静まり、ロレンテはこの時点でコリンズに現実を突きつけるような粘りを見せ、パワーパンチをものともせず戦い続けた。
DAZNの中継では、カール・フランプトンが採点したスコア「87–84」が第10ラウンド序盤に大型スクリーンに映し出され、彼の見立てではロレンテが直近2ラウンドを取っていた。スペイン人の手数が増え、逆にコリンズの勢いが落ちたことで、試合は一気に展開が読めない結末へ向かう。
第11ラウンドはクリンチの多い荒れた展開で、両者とも疲労の色が濃い。ロレンテは目の上をカットし、コリンズは観客の後押しか、一発のビッグショットで再び勢いを取り戻したいところだった。
最終12ラウンドでは、ジョシュ・テイラーがセコンド席から「回り込め」と指示を送る姿が見られたが、この時にはコリンズの脚力はすでに限界。両陣営はこの時点で、試合が6ラウンド以降よりずっと競った内容になっていることを分かっていたはずだ。
ラストベルまでの激しい打ち合いは、この試合がいかにタフで、互角に近いものだったかを象徴する結末となった。
詳しい分析はまもなく公開予定――。