日本・名古屋発 —— PFPスターの
井上尚弥が、WBA1位コンテンダーの
ムロジョン・アフマダリエフを迎え撃ち、日曜日にIGアリーナで行われるスーパーバンタム級4団体統一タイトル防衛戦でホームアドバンテージを得る。
『The Ring』誌でも122ポンド級王者に君臨する井上は、ここ数年にわたって世界最高峰のファイターの一人であり続けている。現在32歳のこの日本人スターは、無傷の30連勝(うち27KO)を記録し、4階級で世界タイトルを獲得してきた。非の打ち所がないキャリアの中で試練の場面は極めて少なく、“モンスター”は今や歴史的名選手の仲間入り目前であり、自身の履歴書にまた一つビッグネームを加えようとしている。
アフマダリエフ(14勝1敗、11KO)は、The Ring誌でスーパーバンタム級2位にランクされており、この階級で元統一世界王者に輝いた実績を持つ。2023年にマーロン・タパレスに敗れて以降、ウズベキスタン出身の30歳サウスポーは、3戦連続で異なる国でKO勝利を挙げており、今回の試合に絶好調で臨む。
井上が保持する世界王座の宝庫を守る本命とされているが、この試合は想像以上に厄介な試練となる可能性がある。“MJ”の異名を持つアフマダリエフは、リオ五輪銅メダルを獲得した輝かしいアマチュア経歴を持ち、優れたリングIQとタイミングの持ち主であり、ほとんどダメージを受けることがない。そして何より、この階級が彼のナチュラルウェイトである点も見逃せない。
アフマダリエフが大番狂わせを起こすのか、それとも井上がまたしても挑戦者を完膚なきまでに叩きのめすのか。
『ザ・リング・マガジン』は、両者の長所と短所を数値化し、各項目0〜5点で採点して分析する。
主要項目
ハンドスピード
井上は単発でもコンビネーションでも電撃的なスピードを誇る(ルイス・ネリを仕留めた一連のフィニッシュブローを見よ)。アフマダリエフは、タイミングと正確性により勝負するスタイルである。
井上:4.5 アフマダリエフ:3.5
耐久力
井上もアフマダリエフも、クリーンヒットを受ければ揺さぶられる可能性はある。井上はこれまで2度ダウン経験があり、ノニト・ドネアとの初戦では何度か効かされる場面もあった。アフマダリエフも唯一の敗戦であるタパレス戦で一瞬効かされた。両者とも打たれ強い。
井上:4.5 アフマダリエフ:3.5
フットワーク
井上のポジショニングと距離感の判断はトップレベルである。ただし、プロ転向以来のアフマダリエフも優れた機動力を誇っており、このカテゴリーでは互角である。MJは滑らかに動きながらトラップを仕掛けるタイプだ。
井上:5 アフマダリエフ:5
リードハンドのパワー
108ポンド〜118ポンドでは、井上はこの項目で文句なしの「5」だった。122ポンドでも依然として相手を倒せる威力を保っているが、倒すまでにやや時間を要するようになってきた。一方、アフマダリエフは強打者ではあるが、本物のノックアウトアーティストとは言い難い。
井上:4.5 アフマダリエフ:3.5
後ろ手のパワー
井上は左右どちらからでも壊滅的なパンチを放てる。
井上:4.5 アフマダリエフ:3.5
ジャブ
井上がこの項目で満点を取っていない唯一の理由は、ジャブが彼にとって最優先の武器ではないからである。チャンピオンがジャブを使うときは非常に素早く効果的であり、実際に非常によく機能している。しかし、井上はパワーショットで相手を粉砕することに強い執着を持っているため、ジャブは彼の“代名詞”とは言い難い。一方で、MJはまったく異なり、ジャブを起点として他のパンチにつなげ、その使い方の幅も非常に多彩である。
井上:4.5 アフマダリエフ:5
フック
パワー、スピード、テクニックのすべてにおいて、井上は現役で最も優れたフック使いかもしれない。彼のフックが的確に当たり始めたら、その時点で試合終了を予感してよい。サウスポーのアフマダリエフは、カウンターで右フックを効果的に使う。
井上:5 アフマダリエフ:4
ストレート/アッパーカット
井上の放つパワーパンチは、どれも最上級である。90%というKO率がその破壊力を裏付けているが、それに加えてスピードと技術が致命的な武器となっている。フアン・カルロス・パヤノやジェイソン・モロニーをKOした右ストレート、ルイス・ネリを仕留めた右アッパー+右ストレートの連打はその好例だ。井上がこの項目で優位に立つとはいえ、アフマダリエフも得意とする領域である。右ジャブから素早い左ストレートへとつなげたり、頭部やみぞおちへの左アッパーでダメージを与えることができる。
井上:5 アフマダリエフ:4
スリップ/ブロック能力
両者とも完全に不可視というわけではないが、ディフェンス面での適応力は高い。井上は極めて攻撃的なスタイルながら、相手の攻撃を外してカウンターを合わせる能力も持ち合わせている。アフマダリエフは生粋のカウンターパンチャーであり、この分野でも優れている。
井上:4.5 アフマダリエフ:4.5
フィジカルコンディション
井上はボクシング界で最もフィジカルが整っている選手の一人とされている。試合が後半にもつれ込んでも、パフォーマンスは一切落ちない。ポール・バトラーやマーロン・タパレスとの試合終盤での勝利がその証である。アフマダリエフも優れたスタミナの持ち主であり、とくに2022年のロニー・リオス戦で見せたラストミニッツの猛攻はそれを裏付ける。
井上:5 アフマダリエフ:4.5
落ち着き・外的要因への対応力
両者ともに世界クラスのプロフェッショナルである。井上はこれまで幾度も逆境に直面してきたが、そのたびに偉大なファイターらしい対応を見せてきた。アフマダリエフも、2023年にタパレスに敗れた後、3連続KO勝利で復活し、今まさに絶好調である。
井上:4.5 アフマダリエフ:4.5
殺傷本能
井上は、ほぼ6年間、判定までもつれた試合がなく、直近11試合連続でKO勝利していることが、その本能を物語っている。アフマダリエフはハードパンチャーとしては知られていないが、一度相手を追い詰めれば冷静かつ正確に仕留める能力を持っている。
井上:5 アフマダリエフ:4
知性と戦術的柔軟性
井上は問題解決能力に長けており、あらゆるスタイルに適応してきた天才型ボクサーである。唯一の減点理由は、時折不用意な場面があり、ネリ戦や
直近のラモン・カルデナス戦でダウンを喫したことが挙げられる。アフマダリエフは自身のスタイルを確立しているが、タパレス戦では我慢強さと精度で互角に渡り合われ、敗北を喫した。
井上:4.5 アフマダリエフ:4
経験値
井上はこの10年間で4階級制覇を達成し、あらゆる経験を積んできた。2018年以降、PFPランキング常連であり、世界中のトップと渡り合ってきた。一方のアフマダリエフも、リオ五輪銅メダリストであり、この階級の元統一世界王者という肩書きを持つ。
井上:5 アフマダリエフ:4.5
ボディブロー
井上は強烈なボディ攻撃で多くの相手を沈めてきており、122ポンドでもその破壊力は健在である。アフマダリエフは左アッパーを使ったみぞおち攻撃が持ち味で、腹部にダメージを与えるスキルが高い。
井上:4.5 アフマダリエフ:4
接近戦スキル
井上がダウンした2度の場面はいずれも接近戦であり、至近距離では視野が狭まり、井上の攻撃性が裏目に出た形であった。ただし誤解してはならない。井上はインファイトでも破壊力を発揮できるため、要注意である。アフマダリエフは相手の先手を引き出し、隙を突いて打ち返すのが巧みで、近距離でのショットセレクションも秀逸である。
井上:4 アフマダリエフ:4.5
対戦相手の質
井上に対する一部のファンからの批判は、「エリート級の相手と対戦していないのではないか」という点である。だが、“モンスター”は、その名が広く知られるようになる前から、すでに世界クラスの選手たちを次々に倒していた。プロ4戦目では、のちにIBF・WBA・The Ringのジュニアフライ級王者となる田口良一に対して、圧倒的な内容で10回判定勝ちを収めている。さらにプロ8戦目では、長期政権を築いていたジュニアバンタム級王者オマール・ナルバエスを、わずか2ラウンドで粉砕した。参考までに付け加えると、アルゼンチン出身のナルバエスは現在、国際ボクシング名誉の殿堂(Hall of Fame)の候補にもなっている。井上はこれまでに、現・元世界王者を12人以上も撃破しており、ジェイミー・マクドネル、フアン・カルロス・パヤノ、ノニト・ドネア(2度)、スティーブン・フルトン、ルイス・ネリ、マーロン・タパレスといった名だたる選手を破ることで、その実力を十二分に証明してきた。アフマダリエフは、そこまでのキャリアの厚みはないが、それでもこの階級が生んだ強豪たちと拳を交えてきた。中でもダニエル・ローマン、岩佐亮佑、ロニー・リオスとの対戦経験は、彼の実力を語る上で重要な実績である。
井上:4.5 アフマダリエフ:3.5
顎と回復力
井上は、真正面からぶつかっていく真のウォリアーである。ドネアとの初対決では、第2ラウンドに日本の英雄である井上の右眼窩底を骨折させられ、試合を通じて何度もダメージを負わされた。しかし“モンスター”は、相手から受けたすべてを受け止めたうえで、それ以上の力でやり返した。そして、自身がこれまでにダウンを喫した2度の場面でも、井上はいずれも立ち上がって逆転KOを収めている。アフマダリエフは、これまでの試合で大きなダメージを受けたことはほとんどないが、井上は彼がこれまでに対峙してきた中で最強のパンチャーであることに疑いはない。
井上:4.5 アフマダリエフ:4.5
運動能力
井上は、パワー、スピード、反射神経すべてを兼ね備えた理想的なボクサーである。アフマダリエフも機動力には優れるが、この項目ではチャンピオンには及ばない。
井上:4.5 アフマダリエフ:3.5
セコンド
父でありトレーナーでもある井上真吾は、欧米では十分に評価されていないが、今日のボクシング界において最も優れたトレーナーの一人である。同じことは、アフマダリエフの指導者ジョエル・ディアスにも言える。彼はかつて世界タイトルに挑戦した経歴を持ち、極めて優秀な指導者である。ちなみにディアスは、今年5月に井上からダウンを奪い、善戦を見せたラモン・カルデナスのトレーナーでもあった。
井上:4.5 アフマダリエフ:4.5
総合評価
- 井上:92.5点 アフマダリエフ:83.5点
- 井上の1項目平均:4.625
- アフマダリエフの1項目平均:4.175
総評
今回の一戦は、フルラウンドにもつれ込む可能性が高い。バンタム級時代の井上の勝利は平均5.2ラウンドで決着していたが、スーパーバンタム級に上げて以降の6試合は、平均7.1ラウンドに伸びている。これは、より大きな相手に対して倒すまで時間を要しているためである。アフマダリエフは技巧派で、冷静に試合を進めるタイプであり、序盤のミスを避けるべく慎重な立ち上がりを見せるだろう。サウスポージャブが鍵となるが、単調になれば井上にカウンターを合わされるリスクがある。アフマダリエフは、井上にとって久々に“勝ちを奪いに行かねばならない”相手であり、井上はその勝利を容易には手にできないだろう。判定決着の可能性もあるが、筆者はボディ攻撃を起点にアッパーカットが決まり、アフマダリエフがキャリア初のTKO負けを喫すると予想する。
予想
井上尚弥 11回TKO勝ち