若い有望株のキャリア初期に常につきまとう質問は同じだ──「顎を打たれたとき、どう反応するのか?」
20歳の天才
モーゼス・イタウマも例外ではない。これまでのプロ12戦で誰も彼に有効打を浴びせられていないため、その答えはまだ出ていない。
しかしイタウマは、10代半ばから非公開スパーリングで場数を踏んできた。かつては制服姿のまま
ローレンス・オコリーのジムに現れたことでも有名だ。元クルーザー級世界王者のオコリーは、今でもそれが自分にとって最もハードなスパーだったと語っている。
イタウマはホワイトとスパーリングしたことはないが、
ダニエル・デュボア、
ジョー・ジョイス、
タイソン・フューリー、オコリーらとリングを共有してきた。では、これまでで最も強烈なパンチを浴びせたのは誰か? その答えは意外な名前だった。
「すぐ思い浮かぶのは」と彼は言う。「ルカ・プラトルヤチッチっていうクロアチアの選手だ。まだアマチュアかもしれないし、プロで1戦したくらいかもしれない」
「正直、彼に打たれたときは、野球バットで殴られたように感じた。しかもクリーンヒットじゃなかったのに、『誰かあいつのグローブをチェックしろ』って思った。でも彼は俺のグローブを着けていたんだ! パンチが本当に重かった。
もちろん、ローレンス・オコリーもスナップの効いたパンチを持っているし、アロイス・ジュニアはパワーのある大きなパンチャー。タイソンにも相手を壊すだけのパワーがある。
でも正直、ヘビー級なら誰でも相手をKOできる力がある。誰か一人が特別に強打だとは言わない。もし顎を砕くのに5ポンドの圧力が必要なら、5.5ポンドでも10ポンドでも関係ない。必要なのは5ポンドの圧力だけだ。
だから長い間、『この相手はパンチがない』『脅威じゃない』なんて思ったことはない」
世間のファンは、イタウマがリング上で危機に直面したときにどう対処するかを見たがっているが、彼自身は急いで証明するつもりはない。
「ボクシングは打って打たれないことが大事だ」と彼は続ける。
「常に打たれているようでは、どんなボクサーかを示してしまう。もちろん、キャリア全体を通して一度も打たれずに終えられるなら、それが一番いい」
「『顎が試されていない』っていう言葉の意味を、人はあまり分かっていない。ヘビー級なら誰でも相手をKOできる力がある。それを否定する者はいないと思う。
ジョー・ジョイスだってかつては“鉄の顎”で知られていたが、ジレイ・ジャンがあの通りにした。顎は割られるものだ。
自分を無敵だとは思っていない。でも、無敵になれるようなつもりで練習している。打たれたくはない。
これまで何千ラウンドもスパーリングをしてきて、その中で打たれたこともある。もちろん10オンスのグローブだと話は違ってくるかもしれないが、だからこそスパーで試合のために完成度を高める。試合では無傷でリングを降りられるような完成されたボクサーでいたいんだ」