マーク・ディキンソン(8勝1敗2KO)は、イングランド・スーパーミドル級王座のチャンピオンベルトを鞄に収め、故郷カウンティ・ダラムへと凱旋する。アルトリンチャムで行われた試合で、リース・ファーンヒル(11勝1敗4KO)との激闘を制し、10回判定勝ちを収めた。
この日のメインイベントでは、2024年オリンピアンのパット・ブラウンが、アルゼンチンのフェデリコ・グランドーネを相手にプロデビュー戦を行う。イベントはDAZNが全世界に向けて配信されている。
ファーンヒルはアグレッシブで実戦慣れしたファイターであり、小規模ホールのサーキットでその実力を着実に証明してきた。2023年11月にはニコリー・キャンベルを下してセントラルエリア王座を獲得し、続く試合ではノーザンエリア王者アダム・ヘップルとの激闘を第4ラウンドKOで制した。さらに昨年10月には、タフなリシャルト・レウィッキを打ち負かしてイングリッシュ王座を手にしている。
ディキンソンは昨年夏、日本で開催された短命に終わったミドル級プライズファイター・トーナメントに出場。竹迫一馬に判定で敗れはしたものの、キャリア初となる10回戦を経験し、パフォーマンス自体は評価された。カウンティ・ダラム出身の25歳にとっては、大きな成長の糧となる遠征だった。
両者は開始早々から距離を詰め、打ち合いに突入した。168ポンド(スーパーミドル級)での初戦となったディキンソンは、持ち前のフィジカルに加え、序盤から鋭く速いジャブを有効に活用。27歳のクリザロー出身ファーンヒルが前に出てくるタイミングを正確に捉え、幾度となくクリーンヒットを奪った。ファーンヒルも打ち合いに応じる場面を作ったが、ディキンソンの左フックが頭部とボディに鋭く刺さった。
ファーンヒルは勝機を見出そうと前に出て、さらにテンポを上げた。確かに距離は詰まり、接近戦の時間は増えたが、その代償として被弾も増え、第3ラウンドでは右目の上をカットした。
それでもファーンヒルは、顔をつたう血をものともせず前進を続けた。第4ラウンドにはディキンソンのジャブがやや効果を失い、試合は完全に至近距離での殴り合いに。展開自体はファーンヒル好みとなったが、実際にダメージを与えていたのは、ディキンソンのコンパクトで鋭い連打だった。
第5ラウンド、ディキンソンは突如としてギアを上げ、攻勢に出た。ファーンヒルは押し返され、続く第6ラウンドではタイミングの良い右を被弾。ディキンソンがフルスピードに入ると、ファーンヒルはついていけず、両者のハンドスピードの差は明確となった。
第7ラウンド終盤、ファーンヒルの右目は大きく腫れ上がっていたが、決して下がらず、両手を振って最後まで前へ出続けた。ディキンソンも応戦し、ゴングまで激しい打ち合いが続いた。第8ラウンドは一転して落ち着いた展開となり、やや手数で上回ったのはファーンヒルだった。
しかしディキンソンは最終盤で試合の熱を冷まし、完全に流れを掌握。ファーンヒルは攻め手を欠き、わずかに踏み込んだ場面でも、その都度ディキンソンに反撃される展開が続いた。
フルラウンドを戦い抜いた末に試合は判定にもつれ込み、ディキンソンが文句なしのユナニマス・ディシジョン(3-0)で勝利を収めた。公式スコアは99-92、98-92、98-93。内容も結果も、王者にふさわしい勝ち方だった。
メインカードの第1試合では、ウィリアム・クロラ(8勝0敗6KO)が、スーパーウェルター級6回戦でエマニュエル・ザイオン(6勝4敗3KO)に判定勝ちを収めた。
試合前、マンチェスター出身のクロラは『ザ・リング』誌の取材に対し、「自分こそがマンチェスター・ボクシング復権の先頭に立つ存在だ」と語っていた。
それもそのはず、クロラは直近6試合連続でKO勝利を挙げており、そのうち5試合は初回決着だった。
しかし今回は、冷静な判断でスタイルを切り替えた。サウスポーの構えから、勢いのあるロンドン出身のザイオンの動きをしっかりと見極めながら、慎重かつ的確な立ち上がりを見せた。
実力者ザイオンとの対戦は確かなステップアップとなり、クロラがヒットを決めてもザイオンはすぐにカウンターを返し、容易に崩れる相手ではなかった。
第3ラウンド、クロラは距離とタイミングを掴み、強い左と右をしっかりと決めてザイオンの注意を引いた。
第4ラウンドではザイオンが前に出て流れを変えようとしたが、クロラは冷静にカウンターを当て、サイドに動きながら得点を重ねた。第5ラウンドにはザイオンがクリーンヒットを決め、クロラのキャリアにとって初めて本格的な試練となった。
勢いを得たザイオンは第6ラウンドでも手を止めず、やや疲れの見えたクロラを攻め込んだ。とはいえ、最終的な58-57の判定は妥当であり、クロラにとって貴重な経験となった。
コナー・タズベリー(2勝0敗1KO)は、アルトリンチャムの「プラネット・アイス」で開催されたマッチルームのNext Gen興行「Before The Bell」セクションの最後を飾り、ロビー・コナー(3勝5敗2分)との6回戦を制して無敗をキープした。
両者はアマチュア時代からのライバルであり、ゴングが鳴るとすぐに火花を散らした。柔らかな動きのコナーはジャブを突きながらリングを広く使い、タズベリーは高いガードから自らのジャブを起点に攻めのリズムを作った。
コナーは手数が少なかったが、その独特なスタイルがタズベリーの的を絞らせず、ジャブが空を切る場面が続いた。距離を詰めた場面でも巧みにクリンチを使い、攻撃の流れを寸断した。
第5ラウンド、タズベリーはペースを上げて右の強打をヒットさせ、一時的にコナーを崩しかけたが、コナーはすぐに態勢を立て直し、再びジャブを軸にリズムを取り戻した。試合は最終ラウンドまで進み、60-54の完封判定でタズベリーが勝利。デビュー戦では短時間で試合を終えたタズベリーだが、今回はプロの現実と向き合う学び多き一戦となった。
テイラー・ベヴァン(3勝0敗3KO)は、アレス・マコベク(5勝4敗1分3KO)との一戦で初回KO勝利を収め、キャリア3戦全KOという完璧な戦績を維持した。
24歳のスーパーミドル級ファイターは、長いジャブと正確な右ストレートで相手を崩し、最後は破壊力抜群の左アッパーカットでチェコ出身のマコベクを完全に沈めた。フィニッシュブローは試合開始2分19秒で決まった。
リアム・テイラー(28勝2敗1分14KO)は、英国ウェルター級王者コナー・ウォーカーへの挑戦権を保持するため、ジェイミー・スチュワート(4勝11敗4分)との6回戦に臨み、盤石の勝利を手にした。
スチュワートは序盤から積極的に前に出たが、テイラーはシャープかつパンチ力のあるボクサーであり、すぐに相手をロープに押し込んだ。そこから短いアッパーカットやボディへの正確な左フックで得点を重ねた。
スチュワートのアグレッシブな姿勢と脆いディフェンスにより、試合はスリリングな展開となったが、打ち合いでは常にテイラーが主導権を握った。第3ラウンドではロープに詰めての連打でスチュワートを追い込み、以降はジャブとコンビネーションを自在に使って試合を完全に掌握。6ラウンドすべてを制し、60-54の完封判定勝利を手にした。
1年間のブランクを経てリングに戻ったミドルトン出身のテイラーにとって、この勝利はウォーカー戦に向けた大きな足掛かりとなった。