試合から遠ざかっていたことは、
マーカス・ブラウンにとって“負け戦”のようなものだった。だが今、彼は再び拳を振るい始めている
ここ数年、マーカス・ブラウンは表舞台から姿を消し、人々の記憶からも薄れていた。しかし、彼自身によれば、それは決して自分の責任ではないという。ボクシング界の事情を知っていれば、そういうこともある。残念ながら彼は、まるで路肩に置き去りにされたような状況に陥ってしまった。
だが、ブラウンはそのまま埋もれるにはあまりにも才能がありすぎた。6月28日、彼はついに復帰を果たす。相手はオランレワジュ・ドゥロドーラ。WBCインターナショナル・クルーザー級王座が懸けられる。このベルト自体は彼のキャリアにおいて最も名誉あるタイトルとは言えないかもしれないが、トップ15入りの足掛かりになる可能性は大いにある。
結局のところ、今のマーカス・ブラウンにとって重要なのは“そこ”にたどり着くことだ。34歳となった彼は、ただ惰性で試合をこなしたり、格下の相手と戦ったりするつもりはない。アマチュア時代からライトヘビー級での活躍に至るまで、彼は常にトップレベルの相手と拳を交えてきた。それこそが、彼がこの競技に身を置いている理由だ。
そして今、クルーザー級で再始動する彼にとって、“頂点”にいる存在こそが
ジェイ・オペタイアである。
現在『ザ・リング』誌とIBFの王座を保持しているジェイ・オペタイアは、クルーザー級で“トップ・ドッグ”と見なされている存在だ。マーカス・ブラウンもそれを認めることに何の抵抗もない。オペタイアは、これまで数々のトップコンテンダーたちをKOで倒し、その名声を築いてきた。
だが、ブラウン(25勝2敗、16KO)は自分のキャリアを振り返ったとき、こう感じる──「俺ほどの相手とは、あいつはまだ戦ったことがない」と。
「オペタイアはいいファイターだ」と、ブラウンは最近『
ザ・リング』に語った。「でも俺みたいなやつとは戦ってないだろ?」
実際、オペタイアの過去2人の対戦相手も、同じようなことを口にしていた。しかし29歳のオペタイアは多くを語るタイプではなく、代わりに拳で証明するタイプだ。
ブラウンが今後数週間以内にランキング入りするかどうかに関わらず、タイトルを手に入れない限り、彼の名前がオペタイアのレーダーに映ることはないだろう。それでもオペタイア(28勝無敗、22KO)は、常にブラウンの“最優先ターゲット”であり続ける。これは個人的な敵意でも嫌悪感でもない。むしろブラウンは、オペタイアの振る舞いを好ましく思っており、その実力にも敬意を抱いている。ただ、ブラウンの性分がそうさせるのだ。「自分と同じ階級で“最強”とされる人間がいるなら、その相手を倒して自分の方が上だと証明したい」――それが彼の信念である。
「俺は誰からも逃げたことはない」とブラウンは語る。「いつだって最高の相手と戦いたいと思ってきたんだ。」