ラスベガス――
マニー・パッキャオは、ヨルデニス・ウガス戦前のトレーニングキャンプ中にあまりにも多くの雑音に直面し、彼の最も信頼する側近の一人でさえ「よくあの状況で試合に臨めたものだ」と今でも首をかしげている。
パッキャオのトレーニングキャンプは通常からして騒がしくなりがちだ。というのも、彼の周囲には常に多くの人がいて、試合に向けてロサンゼルス周辺でキャンプを行う際には、他の公的な義務にも対応しなければならないからだ。 アシスタントトレーナーのジャスティン・フォーチュンは、ウガス戦に向けたキャンプがパッキャオにとっても混乱の連続だったことを振り返っている。それは、フィリピンのスーパースターが、当初予定されていたサウスポーの
エロール・スペンス・ジュニアとの対戦から、右構えのヨルデニス・ウガスとの試合に切り替わった2021年8月のT-モバイル・アリーナでの試合の、わずか2週間前よりも前の段階で起きていたことだった。
「今回は彼のメンタルが全く違う」と、ジャスティン・フォーチュンはマニー・パッキャオが土曜夜にMGMグランド・ガーデン・アリーナでWBCウェルター級王者マリオ・バリオスに挑戦する準備について
『ザ・リング・マガジン』に語った。「前回の試合はひどかった。彼は大統領選に出馬しながら世界タイトルを争おうとしていたんだ。そんなことをする奴がいるか? しかも対戦相手も変わって、もう完全に混乱だった。今回は、本気で集中しているよ。」
当時フィリピンの上院議員だったパッキャオは、ウガスに敗れた5週間後、かねてから噂されていた大統領選に集中するために現役引退を発表した。だが、2022年5月に行われたフィリピン大統領選では、国民的な人気を誇る元ボクサーであるにもかかわらず得票率はわずか7%にとどまり、選挙はボンボン・マルコスの勝利で終わった。
フォーチュンは、政治への関与がパッキャオのウガス戦でのパフォーマンスに悪影響を及ぼしたと確信している。
ウガスは、12回戦を判定で勝利した。対戦相手は当初エロール・スペンスだったが、スペンスがトレーニング中に網膜剥離を負ったため、急きょウガスが代役として起用された。
「あのキャンプは本当に最悪だった」とフォーチュンは語った。「もともと騒がしいのはいつものことだけど、あのときはもう完全にグチャグチャだった。対戦相手が変わってからは、みんなバラバラになってしまってね。言いたいこと、わかるだろ? 詳しく話せるのはボクシング界を離れてからになるだろうな。それにあの時期、フィリピンで上院議員か下院議員の誰かが撃たれて、それがマニーの友人だったんだ。問題が次から次へと積み重なっていって、そんな中でこの気の毒な奴は世界タイトル戦に集中しなきゃいけなかったんだ。本当に大変だったと思うよ。実際にあの試合をやりきったこと自体、驚きだよ。あれはもう、次から次へとトラブル続きだった。」
フォーチュンは、46歳のパッキャオが5月19日にフレディ・ローチのワイルドカード・ボクシングクラブ(ハリウッド)でトレーニングを開始して以来、まったく別人のようなファイターに変わったと感じている。今回の試合は、ウガスに敗れてから約4年ぶりの復帰戦となる。当時の判定は、パトリシア・モース・ジャーマン(115-113)、デイブ・モレッティ(116-112)、スティーブ・ワイスフェルド(116-112)というスコアだった。
「分かるだろ、今でもとんでもなく速いんだ」とフォーチュンは語った。「現役の中でも一番速いんじゃないかと思う。昔からそうだったよ。パワーもほとんど変わっていない。とにかくバカみたいに強い。でも今は集中できていて、しかも楽しそうなんだ。ハッピーなファイターっていうのは、本当に危険なんだよ。」
20年以上にわたってパッキャオとともに歩んできたフォーチュンは、今回のバリオス戦に向けたキャンプを、2018年7月にアルゼンチンのハードパンチャー、ルーカス・マティセと対戦したときのキャンプと比較している。パッキャオがマレーシア・クアラルンプールのアクシアタ・アリーナでルーカス・マティセを7回ストップした一戦は、2017年7月にオーストラリアの伏兵ジェフ・ホーンに地元ブリスベンのサンコープ・スタジアムで判定負けを喫して以来、1年ぶりの試合となった。
「マティセ戦のときなんか、みんなマニーがぶっ倒されると思ってた」とフォーチュンは語った。「でもあのときは本当に素晴らしいキャンプだった。俺と(もう一人のアシスタントトレーナーの)“ブボイ”・フェルナンデスで、犬みたいにトレーニングして、スパーリングも完璧だったし、とにかく楽しくて仕方なかった。笑いが絶えなかったよ。マニーはすごくリラックスしていて、俺たちはあの相手を7ラウンドでKOした。7試合ぶりのノックアウトだったんだ。今のマニーはまさにあのときの彼と同じなんだよ。」
サンアントニオ出身のマリオ・バリオス(29勝2敗1分、18KO)は、現在でもドラフトキングスによれば、マニー・パッキャオ(62勝8敗2分、39KO)に対して約3対1のオッズで有利とされている。両者による12回戦・147ポンドの王座決定戦は、アメリカ国内のすべてのケーブルおよび衛星放送プロバイダーを通じて配信される、プレミア・ボクシング・チャンピオンズの4試合構成によるペイ・パー・ビュー興行のメインイベントとして行われる(東部時間午後8時/太平洋時間午後5時、視聴料79.99ドル)。
Keith Idecは「ザ・リング・マガジン」 のシニアライター兼コラムニスト。X(旧Twitter)では
@idecboxing.で連絡可能。