キャリア初の敗北を喫した後、ボクサーは自らに問いかけることになる。それまで考えたこともなかったような、厳しい質問を。
なぜ負けたのか? 何を変えるべきか? 自分は本当に強いのか? 次はいつ戦えるのか?
自身初の黒星を喫したリアム・デイビス(16勝1敗 8KO)が自らに投げかけたのは、ただひとつのシンプルな問いだった。「俺は何のためにボクシングをやっているのか?」
「しばらくは実感が湧かなかった。でも、現実として、これが人生ってやつなんだろうな。すべてが思い通りにいくわけじゃないし、それを受け入れなきゃならない」とデイビスは『ザ・リング』に語った。
「人それぞれ考え方は違うけど、俺は自分自身を見つめ直したよ。俺は本来の目的を忘れかけていたんだ。
子どもの頃から、俺はこのスポーツが大好きだった。そして、勝つことが大好きだった。
アマチュア時代、トロフィーを獲ることが純粋に楽しかった。でも、時が経つにつれ、ボクシングの『金の話』ばかりするようになってしまった。
振り返ると、そんな自分が好きじゃない。だから、それを変えようと思う。もちろん、適正な報酬を求めるのは当然のことだけど、俺の頭の中は『次の試合で勝てばいくらもらえるのか』ばかりになっていた。確かに金は必要だ。でも、俺がボクシングをやる理由はそこじゃない。
「面白いことに、俺は別に大金持ちじゃないけど、悪くない暮らしをしてる。でも、昔、母親の家に彼女と一緒に住んで、たまに中華料理を食べに行ったり、ただ日常を楽しんでいた頃と比べて、今の俺は特別幸せってわけでもないんだよな。
今も人生を楽しんでいるつもりだけど、本当の意味での『生きる理由』を見失っていたんだ。金は素晴らしいし、チャンピオンベルトも素晴らしい。だけど、結局のところ、大事なのはその瞬間瞬間と記憶なんだ。
なんだかスピリチュアルな話に聞こえるな。でも、そういうわけじゃない。ただ、これは俺が学んだことのひとつさ。」
昨年11月、かつてアマチュア時代に対戦したシャバズ・マスードと再び拳を交えたデイビス。試合前まで彼は、イギリス・ボクシング界で最も勢いのあるボクサーのひとりだった。
わずか2年半の間に、英国王座、欧州王座、IBO世界スーパーバンタム級王座を獲得し、ボクシング技術とフィニッシュ力を見せつけてきた。彼は堂々と**「世界のトップと戦い、勝つ」と語り、果ては日本に乗り込み、絶対王者・井上尚弥(井上 尚弥)と戦う**という夢を口にしていた。
しかし、マスードはそんなデイビスの計画を打ち砕いた。彼は冷静沈着に的確なカウンターを当て続け、判定でデイビスを破ったのだ。
この結果を受け、「マスードがデイビスの限界を露呈させた」と考える者もいるかもしれない。しかし、これまでのデイビスの実績を考えれば、単なる「調子の悪い一夜」だったと考える方が正しいだろう。
もし、死闘の末に倒されていたのなら、彼は「限界に達した」と認めざるを得なかったかもしれない。だが、今回の敗戦は「過去の自分とまるで別人」のような試合だった。そのため、むしろ「これはただのつまずきに過ぎない」と前向きに捉えることができたという。
「そう、その通りだよ。でも、結局のところ、人それぞれの見方があるだろ?」とデイビスは語る。
「俺はいつも正直でいたいんだ。今回もそう。でも、ボクシングにはこういうことがある。俺は過去に何千回も悪いスパーリングを経験してきた。
試合に向けてしっかり準備して、これもやって、あれもやって、ってやるだろ? そうなると『あとはリングに上がるだけ』って気になっちゃうんだよな。緊張感が薄れて、集中力も欠けてしまう。
だからこそ、今回の敗戦はいい教訓になった。次の試合の重要性は、これまでとはまったく違うレベルになるはずだ。」
「面白いよな? もし俺が前回の試合に勝ってたら、そのままスーパーバンタム級にとどまってたかもしれない。そして、結局いつかは壁にぶち当たっていただろ?」
デイビスはフェザー級(126ポンド)への転向を決意した。実際、彼はスーパーバンタム級では非常に大柄な選手だった。ただし、サイズを活かした「ウェイト・ブルーイング(階級差で優位に立つスタイル)」ではなく、彼の強みは「正確性」「タイミング」「自信」にあった。
デイビスはすぐにトップ戦線に食い込み、トロフィーを集め、記憶に残る試合を作るつもりだ。
「俺はとにかく戦いたい。負けたら評価が落ちるのは当然。でも、俺はすぐに取り戻す自信がある。」
「学ぶべきことは学んだ。あとは、前に進むだけだ。」