静かに、しかし着実に――イギリスのフェザー級は今、層の厚さを増してきている。
リー・マクレガー(15勝1敗1分、11KO)は、そんな賑やかな舞台に新たに加わった一人。まだフェザー級戦線では新顔だが、すでにその渦中に飛び込む準備は万端だ。
28歳のスコットランド出身マクレガーは、5月24日に同じく無敗の同胞、ナサニエル・コリンズ(16勝無敗、7KO)との一戦に臨む。会場はグラスゴー。
現在、この階級で先頭を走っているのはWBA世界王者のニック・ボール。リバプール出身のボールは、4団体統一王者でありリング誌スーパーバンタム級王者でもある井上尚弥との“スーパー・ファイト”を視野に入れている。
マクレガーはそのボールのすぐ後ろにつけており、今のフェザー級で最も野心的で才能ある一団の中に名を連ねている。
一方のコリンズはというと、昨年はヨーロッパタイトル戦が目前に迫っていたが、深刻な病により2024年のシーズンを事実上棒に振る形となっていた。
ザック・ミラーが現在、英国とコモンウェルスのタイトルを保持しており、さらに元欧州&英国スーパーバンタム級王者のリアム・デイヴィスもフェザー級戦線に加わってきた。彼は5月10日に無敗のアイルランド人オリンピアン、カート・ウォードとの対戦を予定している。
この混戦を制する者は、実力ある強豪を倒してその価値を証明することになり、将来的にニック・ボールと同じ世界レベルで戦ううえで必要不可欠な経験を積むことになるだろう。
マクレガーにとって、どこを見てもターゲットが目白押しの状況だ。
「国内戦線はとにかくカオスですよ」とマクレガーは『ザ・リング・マガジン』に語る。
「ニック・ボールが先頭にいて、まさに自分たちが目指すべき場所にいる。それが僕らの目標です――全員が世界王者になりたいと思ってる。今のボクシング界なら、こういう試合は比較的簡単に組めると思うんです。同じプロモーターの下にいる選手も多いし、試合の障害になるようなものが少ない」
「チャンスを受け入れる覚悟があり、挑戦する準備ができていれば、試合は実現する。あとは自分が勝ち続けるだけ。そうすれば、自然とすべてが繋がっていくと思ってます」
マクレガーは、国内で“頂点に立つ”ために必要なものを知っている。
彼はヨーロッパ、英国、そしてコモンウェルスのタイトルを史上最速で獲得した記録保持者であり、その偉業をたった10戦で達成している。かつては“世界王者になるのは時間の問題”と思われていた存在だ。
階級に対して体が大きくなりすぎたのか、それとも急速に輝きを放った代償として心身に疲労が蓄積したのか――理由はどうあれ、リー・マクレガーは一時的に調子を崩した。
2023年7月、スーパーバンタム級に階級を上げて挑んだエリック・アヤラ戦では、激しい接戦の末に敗北。これを機に、マクレガーは自身のキャリアの方向性を見直すこととなった。
彼は2024年の多くを“再構築”の時間に充て、同年12月、統一&リング誌認定世界ヘビー級王者オレクサンドル・ウシクとタイソン・フューリーの再戦アンダーカードで、サウジアラビア・リヤドへ遠征。アイザック・ロウとの試合に臨んだ。
試合では多少のリング・ラストが見え隠れしたものの、かつてのマクレガーらしい鋭さも随所に見られ、126ポンドでの動きはシャープかつ力強かった。結果は文句なしの判定勝利。自信を取り戻し、キャリア後半戦を世界タイトル獲得で締めくくるという強い意志を新たにしている。
「今、自分は本当にいい状態で次の試合に向かっています」とマクレガーは語る。
「ナサニエルと僕は、どちらもWBCのランクで上位にいて、今回の試合はWBCシルバータイトルが懸かっている。勝者は、今年中に世界タイトル挑戦のチャンスを得るのはほぼ間違いないと思う」
「じゃあその挑戦がどうなるか? 英国人同士のビッグマッチになるのか? ニック・ボールが井上尚弥戦を待つ間に挟む試合になるのか?」
「現実的に考えて、井上戦までにボールが1試合挟むなら、俺かナサニエルがその相手になる可能性は十分あると思う」