ラモント・ローチは、試合前から何を言われていたのかよく分かっていた。
ファンが「どれほど無惨に倒されるか」を語るのを聞いていた。メディアの専門家たちが「何ラウンドでKOされるのか」と議論するのも耳にしていた。さらには、トレーナー陣が「ジャーボンタ・デービスのパンチ力は危険だ」と警告する声も届いていた。
ローチは、デービスの強打を知らないわけではなかったが、特に気に留めていなかった。確かにデービスは、これまで多くの相手を沈めてきた。しかし、ローチは決して臆病者ではない。自分のスキルに自信を持っていたし、打たれても耐えられるという確信もあった。
「言っただろ、俺のアゴは強いんだ」と、ローチは記者団に語った。
パンチを耐えられることを証明するには、実際にそのパンチを受けなければならない。そしてローチは、この週末の試合で何度もクリーンヒットを食らいながら、一度もぐらつくことはなかった。さらに、一歩も引かなかった。
そのタフネスと、試合を通じて見せた攻撃が評価され、結果は多数決ドロー。ローチ(25勝1敗2分10KO)は、リングサイドの3人のジャッジの判定には納得していないが、それでも即時再戦の可能性を期待している。
デービスは試合後の会見で、「ローチとの再戦は実現する」と明言。ただし、来年になる可能性が高いと語った。
しかし、それは試合直後の勢いで出た発言かもしれない。実際、その後ローチとデービスがSNS上で言葉を交わした際、デービスは「俺は再戦をプッシュするつもりだ」と発言。この言葉は、ローチにとって何よりも嬉しいニュースだった。
再戦が現実味を帯びる中、ローチは試合前に聞かされていた「デービスのパンチ力」について改めて振り返る。通常なら、リング誌が選ぶライト級1位のデービスがクリーンヒットを決めた瞬間、相手は崩れ落ちる。
しかし、ローチの反応はまったく違っていた。
「やつのベストショットを受けた瞬間、『ああ、もう行くしかねぇな』って思ったよ。」