無敗同士のジュニアフライ級対決で、
高見享介が序盤から試合を完全に支配し、WBA王者
エリック・ロサに対して10ラウンドTKO勝ちを収め、日本の新たな世界王者となった。
母国ドミニカ共和国以外で初めてリングに上がったロサは、地元・横浜文化体育館の声援を一身に受ける日本の高見の前に、序盤から早くもプレッシャーを受ける展開となった。
DAZNで生配信された世界戦三連戦の第1試合で、高見は序盤から左ジャブと鋭い右クロスを軸に自信を深めていった。両者が激しく打ち合うたびに、その右は正確にロサを捉え、試合の前半戦を優位に進めた。
ロサのタフネスぶりに疑いの余地はなく、接近戦を望んで前に出続けたが、放ったパンチは思うような効果を上げられなかった。第6ラウンドでペースを整えた高見は、第7ラウンドに入ると一気にギアを上げ、右フックでロサをぐらつかせた。
レフェリーのマーク・ネルソンは、王者ロサのローブローに対して2度目の警告を与えた。この場面が引き金となったかのように、高見(10勝無敗、8KO)はさらに前へと圧力を強め、怒涛の連打を繰り出して王者を追い詰めていった。
試合は第9ラウンドへと進み、東京出身の若き高見にとってはキャリア最長のラウンドとなった。一方、ロサ(9勝1敗、2KO)は逆転にKOが必要な状況を理解していたはずで、前に出続けたものの、ボディが空きがちになり、的確なカウンターを何度も被弾する展開となった。
両者はリング中央でコンビネーションを応酬し、ロサも果敢に打ち合いに応じたが、踏み込みすぎる場面も目立った。ラウンド終盤、ボディに右をもらったロサは一瞬動きが止まったものの、すぐにフットワークを使って持ち直した。
高見が勢いそのままに攻め立てる中、強烈な右が炸裂し、場内からはどよめきが上がった。ロサはなんとか持ちこたえようとしつつも、至近距離での打ち合いに応じてしまい、高見の勢いを止めることができなかった。
カウンターの右を被弾した25歳のロサは体勢を崩しながらコーナーへ吹き飛ばされ、この試合初のダウンを喫した。朦朧とするロサを前に、高見は明確にフィニッシュを意識し始めていた。その後、もつれ合ったクリンチの末にロサが崩れ落ちるようにキャンバスに倒れたところで、レフェリーのネルソンはこれ以上は無理と判断し、すぐに試合をストップした。ロサはすぐに立ち上がったものの、この裁定は妥当であり、すでにしばらく前から決着は時間の問題のように感じられていた。
試合後、高見は自身の今後についてはまだ明確な見通しが立っていないとしながらも、プロ10戦目という節目でこのチャンスを与えてくれたプロモーター本田明彦に感謝の意を示した。その体格からフライ級への転級も噂されているが、プロデビューからちょうど3年という節目で迎えた世界王座獲得という“贅沢な悩み”を抱えることになった。
この日のアンダーカードでは、スーパーバンタム級のジョー・ウメザワ(2勝2敗)がデビュー戦となった磯部天翔に4ラウンドのスプリット判定勝ちを収めた。また、東京のミドル級ファイター谷口優輝は、北村“メビウス”幸宏に対して第2ラウンドTKO勝ちを記録した。