デービス兄弟は、常に団結することを大切にしてきた。最初は必要に迫られてのことだった。ケルビン、キーショーン、キーオンの3人は、母親が家計を支えるために働く間、自宅あるいはボクシングジムで共に過ごしていた。時が経ち、3人が成人してそれぞれの人生を歩めるようになっても、彼らは離れることなく、少年時代に描いた夢「デービス・ブラザーズ・エンタープライズ(略称:DB3)」を追い続け、全員がプロボクシングの道を選んだ。
その中でも最年少のキーオンにとっては、プランから外れるのが最も簡単だっただろう。キーショーンが米国ナショナルチームに所属し、ケルビンが電気技師の仕事を目指していた時期、キーオンは一人で過ごす時間が多かった。かつては10人が3部屋で暮らす家で、ソファや床を転々としていた兄弟たちだったが、キーオンはやがて時間と空間を得るようになった。
「一人で過ごしたあの数年間で、自分が誰なのかを見つけ出す必要があった」と、ウェルター級の有望株であるキーオンは『ザ・リング・マガジン』に語った。「本当にボクシングをやりたいのか、自分で自分に問いかける時間だった。その頃はシャクール・スティーブンソンと一緒にいることが多かった。大変だったが、乗り越えられた」
身長6フィート3インチ(約190cm)で、154ポンド級にも適した体格を持つキーオンは、どのトレーナーやマネージャー、プロモーターも垂涎するようなフィジカルの持ち主だった。キーショーンは、昨年ESPNのマーク・クリーゲルとのインタビューで、3人の中で最も優れた才能を持つのはキーオンだと常々言っていたことを明かしている。2019年までには、キーオンは米国内のナショナルトーナメントの最終ラウンド常連となり、ナショナルチームの遠征メンバーでもあった。しかし、手術を要する怪我によりその歩みは一時停止し、長年信じてきた夢さえも疑い始めた。冷却療法機器BREGに繋がれた状態でソファに横たわる彼の傍らで、兄たちはプロデビューのタイミングを模索していた。
ケルビンは2020年末にプロ入りし、キーショーンは五輪出場を控えた2021年初頭に続いた。自分探しに時間を費やしていたキーオンは、人生の岐路に立っていた。
「腕の手術でボクシングから離れた後、自信を失っていた」と語るキーオンは、一時兄ケルビンと同様に電気技師の道を検討していた。「1年ほどボクシングをやめて、普通の仕事に就いた。倉庫とか、害虫駆除の会社で働いていた。でも働きながら、これじゃないって思った。自分にはボクシングの才能があって、もっと上を目指せると気づいた。その時ちょうど兄たちがプロ入りして、プロとして活躍する姿を見て、もう一度ボクシングに戻ってこの夢を兄弟で叶えようと決意した」
オリンピック予選を制したキーオンは、昨年11月8日に兄たちと共にプロデビューを果たし、地元バージニア州ノーフォークで3人全員が同じ興行で勝利を収めた。そして今週金曜、キーオンは再びキーショーンと同じ興行に出場する。兄はWBO世界ライト級王座をかけてデニス・ベリンチクと対戦する。
どんな場面であれ、彼らは常に支え合ってきた。たとえそれがプロ2戦目であっても、世界タイトル戦であっても、その絆は揺るがない。
「一緒に育った兄弟でも、成長とともにバラバラになることはある。でも俺たちは同じ競技に身を置いている。ケルビンが一時ボクシングを離れていた時も、俺たちの試合や大会には必ず来てくれていた。リングの外で家族の存在を感じることがどれだけ大事か、彼も知っているから」と、イラ・ジョンソンとの4回戦を控えるキーオンは語った。
デービス一家とその仲間たちにとっては多忙な時期である。前述のスティーブンソンは2月22日にフロイド・スコフィールド(キーオンがアマチュア時代に勝利)との試合を控え、テレンス・クロフォードはシーズン・リヤドでのカネロ・アルバレス戦に向けて動いている。
今、注目はキーオンに向けられていないかもしれない。だが、孤独な時間が育んだ彼の個性と自立心は、必要な時に力を発揮する。
「俺は自分なりのやり方で集中するし、必要だと思ったら自主トレもする。自分を鍛えるのに苦労はしない。過去に一人で練習し、自分と向き合った経験があるから」と、キーオンは語る。「兄や他の選手たちに注目が集まっても、俺はただ誇らしい気持ちで彼らを見ている。でも最後には、自分の試合があるんだ。だから、自分の集中を切らさないようにしてる」
現在23歳、キャリアわずか1戦。キーオンがキーショーンと肩を並べるにはまだ時間がかかるように見えるかもしれない。しかし、デービス兄弟の絆を知る者なら、それがそう遠くないことも分かっているはずだ。
「そう遠くないと思う。神の御加護があれば、10戦以内にタイトル戦か大きなチャンスを掴めるはず」と、キーオンは語った。