アンソニー・ジョシュアとタイソン・フューリーという、過去10年間にわたり英国ボクシング界を牽引してきた二大スターが、いずれリングを去る日が来る――その厳然たる現実を受け止めつつ、カレ・ザウアーランドは両者引退後の空白を埋めるべく、次世代のスター発掘に向けた取り組みを加速させている。
ザウアーランドは、ワッサーマン・ボクシングのグローバル責任者であり、過去20年以上にわたり数多くの名選手をプロモートしてきた。2009~2010年に開催された「スーパーシックス・ワールド・ボクシング・クラシック」、および2017~2020年の「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ」では中心的な役割を果たした。
現在47歳のザウアーランドは、英国内で地上波チャンネル「チャンネル5」との提携を通じてボクシング中継を展開。ハーレム・ユーバンク、ジョシュ・ケリー、マイケル・コンランらがワッサーマン陣営のもとでリングに上がっている。
中でも、伝説的元王者である叔父クリス・ユーバンク・シニアがセコンドにつくハーレム・ユーバンクは、知名度という点で群を抜いている。ザウアーランドもその事実を認識しており、短期的にはジャック・キャタロールやアダム・アジームとの注目カードが期待されるが、視野はより長期的な展望に向けられている。
ザウアーランドは『ザ・リング・マガジン』誌にこう語った。「英国のような素晴らしい市場で、地上波ボクシングを代表する立場にあるのは特別な名誉だと思っている。この数年で『年間最高試合』や『年間ノックアウト』候補を何度も生み出してきたし、非常に充実した時期だった。チャンネル5では、多くの才能が育ってきた。過去を振り返れば、タイソン・フューリーもそうだし、ジョシュ・ケリー、そしてハーレム・ユーバンクもこのプラットフォームを通じて名を上げた。」
「我々がしないのは、ユーバンクのために無理やり試合を組んだり、場当たり的なマッチメイクをすることだ。彼には今、素晴らしい舞台が整っている。市場価値も高まり、数字もついてきている。」
「アジーム戦の話が出る前までは、非常にいいペースで進んでいたと思っている。今はその流れにもう一度戻したい。」
「今注目しているのは、世界ランキング上位15位以内の選手たちだ。個人的には、アメリカからも良い名前が出てくることを期待している。」
話題は次第に、より広い視点へと移る。すなわち、ジョシュアやフューリーというスーパースターに依存してきた英国ボクシング界が、まもなくその支柱を失うという現実である。
今年初め、オレクサンドル・ウシクとの再戦に敗れた数週間後、フューリーは何度目かの引退を表明。復帰の可能性は高いものの、彼はすでに30代後半に差しかかっている。
ジョシュアもまた、7度のスタジアム満員を記録し、五輪金メダルからプロの顔役へと登り詰めた存在。2度の世界王座獲得という実績を持ち、多くのファンと莫大な興行収入を生んできた。
だが彼もまた、残された試合数はごくわずかだろう。
「その後はどうなる?」とザウアーランドは問いかける。
「次世代のスターを英国で育てるという意味では、種をまくことが非常に重要だ。今の英国のトップ選手たちを見てみよう。道を歩いていて、通行人に『今のイギリスのボクサーを3人挙げてください』と聞いたら、おそらくタイソン・フューリーとAJ(ジョシュア)は出てくる。でも3人目からは分からなくなるはずだ。」
「つまり、その2人は遅かれ早かれ引退する。」
「じゃあ次の3〜4人は誰なのか? 英国市場では、常にトップスターは3〜4人しか存在しない。そしてその“トップ”とは、ペイ・パー・ビューのメインを張れるレベルのことだ。せいぜい5人が限界だろう。歴史的に見ても、それ以上いたことはほとんどない。」
マッチルーム・ボクシングとエディ・ハーンもまた、ジョシュア引退後の穴を埋めるために動いており、2024年パリ五輪代表のパット・ブラウンを、かつてのジョシュア同様にプッシュしている。
ただし、ブラウンはホーム開催の五輪で金メダルを取ったジョシュアとは違う。プロデビュー戦はDAZNでの配信に留まり、ジョシュアがスカイスポーツでO2アリーナを主役として沸かせたのとは対照的だ。
クルーザー級のブラウンは、将来的にはヘビー級へ転向する可能性もある有望株だが、どれほどの「国民的スター性」を持つかは未知数である。
「で、君は誰が次のスターになると思う?」とザウアーランドは問いかける。「2〜3年後、トップスターになるのは誰だ?」
パット・ブラウンはその候補の一人だろう。アダム・アジーム、そしてクイーンズベリー所属のヘビー級モーゼス・イタウマの名も挙がる。
「正直、簡単なことじゃない。でも極めて重要だ。スターというのは『揃う』必要があるんだ。」
「ここで言う『トップ5』は、実力ではなく『スター性』のことだ。ユーバンク・ジュニアなんかは9年間一緒に仕事してきたけど、世界王座は獲っていない。それでもコナー・ベンとの試合のように、大舞台に立てる力がある。それがボクシングの面白さでもある。」
ユーバンク・ジュニアとコナー・ベンは、それぞれが大きな名前を持つ。両者は、4月26日にトッテナム・ホットスパースタジアムで開催される『The Ring』主催「FATAL FURY: City of the Wolves」『餓狼伝説:狼たちの街』で激突予定だ。
現在36歳に近づくユーバンク・ジュニアがブックメーカーの本命視されている一方、VADA(自発的ドーピング検査機関)による2度の薬物検査陽性からの潔白が証明されたベンは、まだ英ボクシングファンからの信頼回復の途上にある。今回の試合で大敗すれば、今後のキャリアに大きな影響を及ぼすだろう。
そんな中でもザウアーランドは、英国ボクシングの将来が実り多く、経済的にも大きな成功を収められるものになると、静かな自信と共に明るい展望を抱いている。
「この仕事を始めて27年になる」と彼は語る。「選手が多すぎて手に負えない時期もあったし、何をやっても上手くいかない時期もあった。」
「世界王者に何度もなった選手もいたが、引退後は一般の仕事に就かなければならなかった例もある。」
「だからこそ、適切なチーム体制が不可欠なんだ。我々は今、ランキング上位にいるだけでなく、個性も兼ね備えた魅力ある選手たちを擁している。今の時代、ただ強いだけではダメで、パーソナリティも極めて重要になっている。」
「昔は、地味な選手でも通用したが、今はそれでは絶対に通用しない。」