テレンス・クロフォード対カネロ・アルバレス?
それは長らく“夢の対戦”のようなもので、例えるならば──ゲンナジー・ゴロフキン対マーヴィン・ハグラー、フロイド・メイウェザー対シュガー・レイ・レナード、あるいはオレクサンドル・ウシク対モハメド・アリといった“もしも”の世界の話のようだった。
もちろんこれらの例は極端かもしれないが、現実的に両者が交差する可能性はほとんどないように思われていた。だが、クロフォードはこの対戦に本気で動き出した。
当初、アルバレスはその話に懐疑的だったが、そこに潜む莫大なファイトマネーと歴史的な意義を考えると、実現させない理由が見当たらなかった。そして今、クロフォードは9月にも2階級上げて、アルバレスとの一戦を正式に挑む見込みとなっている。
このマッチアップについては、世間の反応もまちまちだ。「面白い」と言う者もいれば、「大歓迎だ」と熱狂する者もいる。一方で、ファン・マヌエル・マルケスは乗り気ではない。
「この試合は好きじゃない」と、マルケスはFightHub TVに語った。
まだ正式発表はされていないものの、テレンス・クロフォード対カネロ・アルバレスの試合は、ほぼ決定済みと見られている。ただしその前に、アルバレスには越えなければならないハードルがある。5月3日、サウジアラビア・リヤドで行われるDAZN PPVのメインイベントで、IBF王者ウィリアム・スカルとの対戦が控えているのだ。この試合に勝てば、スーパーミドル級4団体統一へ向けた最後のピースが揃うことになる。
その間、クロフォードは168ポンド級でのデビューに向けてウェイトルームにこもり、筋力アップとフィジカル強化に取り組む予定だ。
だが、いくらダンベルを持ち上げ、肩幅を広げ、体を鍛え上げたとしても──それは「意味をなさない」とファン・マヌエル・マルケスは語る。
クロフォードは常に素晴らしいファイターだった。マルケスは彼がライト級(135ポンド)で相手を圧倒する姿を見てきた。スーパーライト級(140ポンド)で4団体統一を成し遂げたときには歓声を送り、ウェルター級(147ポンド)で同じ偉業を達成した際にも誇りに感じた。さらに154ポンドでタイトルを手にしたことにも感心していた。
だが、そこからさらに一歩進み、「アルバレスの階級、アルバレスのルール」で彼を王座から引きずり降ろそうというのは──マルケスにとって、さすがに「やりすぎ」だという。
「テレンス・クロフォードはスーパーライト級やウェルター級では素晴らしいファイターだったが、ボクシングという競技には“階級”があるのには理由があるんだ」