2017年の夏が終わりに近づくころ、WBOヘビー級王者
ジョセフ・パーカーの野望は明確だった――このショーを引っ提げてイギリスへ乗り込むことだ。
プロ戦績23戦23勝。2016年12月に
アンディ・ルイス・ジュニアを判定で下して手にした世界タイトルが、その証として輝いていた。
アメリカでの地味な6回戦を2試合、ドイツでの1試合を除けば、当時のパーカーの全戦績はすべて南半球で行われていた。彼はキャリアを積む上で間違ったことは何ひとつしていなかったが、ヘビー級戦線で本格的に存在感を示すためには、新しい舞台を切り開く必要があるという空気が漂っていた。
元統一世界王者
タイソン・フューリーがアルコールと薬物問題で表舞台を離れていたとはいえ、当時のイギリス・ヘビー級は勢いを保っていた。
アンソニー・ジョシュアがIBFとWBAの2本のベルトを保持し、
デレク・チゾラや
ディリアン・ホワイトといった実力者たちも世界レベルの舞台で存在感を示していた。
「その地域に自分を売り込むことが、あの時の戦略そのものだった」とパーカーは『ザ・リング』に語る。「もちろん試合を手に入れることが最初の目標だったけれど、当然ながら勝つことも必要だった。
あの頃から、人々がようやく“ニュージーランドとサモア出身のボクサーが世界に名を刻もうとしている”と認識し始めたんだ。」
イギリス侵攻の幕開けは2017年9月。WBO王座の2度目の防衛戦であり、対戦相手はタイソン・フューリーのいとこであるヒューイ・フューリー。会場はマンチェスター・アリーナだった。試合は僅差のマジョリティ判定でパーカーが勝利を収めた。結果については、特にフューリー陣営から異議が出たものの、3人中2人のジャッジが118-110でパーカーを支持していた。
試合内容自体はヘビー級の名勝負と呼べるものではなかったが、この勝利によってパーカーはアンソニー・ジョシュアとの統一戦への道を切り開いた。舞台はカーディフのプリンシパリティ・スタジアム。無敗の世界王者同士が3本のベルトを懸けて激突したのは2018年3月のことだった。
その夜、パーカーはジョシュア相手に初めてフルラウンドを戦い抜いた男となったが、結果は大差の判定負け。14か月にわたる王座在位期間に終止符が打たれた。
それでも戦略は成功していた。パーカーはイギリス市場で価値ある存在となり、ジョシュア戦からわずか4か月後にはロンドンのO2アリーナでディリアン・ホワイトとの対戦を実現させた。第2ラウンドと第8ラウンドにダウンを喫し、2戦連続で判定負けを喫した。
「最後にあそこで戦ってから、もう7年も経ったなんて信じられない」とパーカーは語る。「実際のところ、ディリアン・ホワイト戦がこれまでで唯一のO2アリーナでの試合なんだ。だからまた戻れるのを楽しみにしているし、観客の反応もね。彼への声援が多いだろうけど、僕のことを応援してくれるファンもいると思う。」
では、あのドームの下で戦ってから人生はどう変わったのか?
「ええと、子どもが5人増えたね」と笑いながら答える。「トレーニング方法も、チーム構成も、戦い方の哲学も、準備の仕方も、家族との時間の過ごし方も、すべてが違う。今の自分はキャリア最高の状態にあると感じている。
ジョシュア戦やホワイト戦の頃を振り返ると、あの頃の自分とはまったく別のファイターだ。メンタリティも、準備も、すべてが変わったんだ。」
当時のパーカーはネバダ州ヘンダーソンでケビン・バリーの指導を受けていた。幼い家族をニュージーランドに残し、ラスベガスのストリップ地区から車で少し離れたバリー家の空き部屋で生活していた。
一方、現在はアンディ・リーのもと、アイルランド・ダブリンでトレーニングを行っており、妻と子どもたちもキャンプ地へ同行している。
「今は本当にこの生活を楽しんでいる」とパーカーは語る。「自分のやっていることが大好きなんだ。以前は“やらなきゃいけないからやっている”という感覚だったけれど、今は本当にこのスポーツに情熱を持っている。その気持ちがあるからこそ、もっと一生懸命トレーニングできるし、より多くの努力を注ぎ、集中力と規律を保てるんだ。」
その努力の成果として、パーカーは現在6連勝中だ。しかも直近3試合はいずれも強打者との対戦――
デオンテイ・ワイルダー、
ジャイ・ジレイ(張志磊)、そして
マーティン・バコールという錚々たる顔ぶれである。彼はこれら3人をほぼ完全に封じ込めてみせた。
しかし今回のファビオ・ウォードリー戦では、さらに高いKO率を誇る相手と対峙することになる。ウォードリーはこれまでの勝利のうち、実に94.74パーセントを途中決着で収めているのだ。
とはいえ、再び荒々しくバックハンドを得意とする強打者が目の前に立ちはだかる今回、パーカーは過去のキャンプで磨いてきた戦術を存分に応用できている。
「ワイルダーを見てみると、彼は時間をかけすぎた。結果的に僕に試合のペースを握らせてしまったと思う」とパーカーは語る。「次に張志磊(ジャイ・ジレイ)だけど、彼は途中でスタミナが切れた。もしもう少し体力とエネルギーがあれば、違う展開になっていたかもしれない。そしてバコールは、直前に代わりで出てきた相手だった。
ウォードリーはその点、ずっとフレッシュだ。若くて勢いがあるし、ジャスティス・フニ戦で見せたように試合を通してパワーを維持できる。だから今回も準備はこれまで通りだが、前回の試合よりもさらにコンディションを上げて臨むつもりだ。体重も重くしすぎず、より機敏に動けるようにしている。」
同じ川の水に二度と足を踏み入れることはできない――そう言われるように、テムズ川沿いのアリーナに再び戻る彼を取り巻くボクシング界の景色もすっかり変わった。それでも、7年前に2連敗を喫したあの時期を振り返っても、パーカーはあの挑戦を「目的達成」として捉えている。
「この7年間で、当時掲げていた目標は達成できたと感じている」とパーカーは締めくくる。「イギリスで多くの試合を重ね、アメリカでもいくつか、そしてサウジアラビアでも戦う機会を得た。そのおかげで、この地域で自分たちの存在を確立できたと思う。
イギリスには熱心なファンと素晴らしいサポートチームがいて、戻ってくるたびに多くの声援をもらえる。本当に不思議な気分だよ。ニュージーランド出身で、サモアという小さな場所のルーツを持ちながら、イギリスやアイルランド、この地域でこれほどまで応援してもらえるなんて――それを実現できたことは本当に最高の気分だ。」