ティム・チューの世界は、2024年に一気に崩れ去った。
オーストラリア出身のチューは、IBF王座を失い、無敗記録も途絶え、その名声の一部までも失った。そんな彼に再びトップレベルの対戦相手をぶつけるのは無謀とも言える判断かもしれない。そこで、チーム・チューはジョセフ・スペンサーこそが再起戦にふさわしい相手だと考えた。
いわば自信回復のための一戦。チュー(24勝2敗、17KO)にとっては、最近の悪夢を払拭し、精神状態を整えるための試合と見なされている。
しかし、スペンサーはすぐさま鏡の前に駆け寄った。そして自分の額をじっと見つめた。チーム・チューや大多数の観戦者たちの態度を考えれば、彼の顔には「楽な相手」とでも書かれているのではないかと思えてきた。
だがスペンサーの目には、そんな見方こそ誤っていると映っている。彼はその誤解を晴らす日を心待ちにしている。
「自分が何を持っているかは分かっている」とスペンサーは、最近のショーン・ジッテルとのインタビューで語った。「これまでどれだけ努力してきたか、この舞台に立つまでにどれだけの道のりがあったか、自分自身が一番理解している」
現在、スペンサーは単なる「踏み台」として見られている。そして本人もその評価に内心納得がいかないながらも、ある程度は理解している。
数年前、彼はヘスス・ラモスとの試合で圧倒され、ストップ負けを喫した。その傷を癒やすのに時間はかかったが、すでに過去の出来事として乗り越えている。3連勝を挙げている現在のスペンサー(19勝1敗、11KO)は、まるで別人のような状態だ。彼が試合スタイルに施した改善点が見えないとすれば、それは見ている側の不誠実さだと、25歳のスペンサーは信じている。
試合は数日後、オーストラリア・ニューカッスルのエンターテインメント・センターで行われる予定だ。今さら改善点について語っても意味はないと、スペンサーは考えている。チューに3連敗目を与えることで、全世界が彼の言う「変化」の意味を理解することになるだろう。
「ピースがすべてハマってきた気がする」とチューは続けた。「ただ、今こそが俺の時代なんだと感じている」