イマム・カタエフは、決して楽な道ではなかったが、激しい打ち合いの末に仕事をやり遂げた。舞台はオーストラリア・シドニー。ジョージ・カンボソスJr vs ジェイク・ウィリーのアンダーカードとして行われた一戦で、カタエフはドゥルバル・エリアス・パラシオとのタフなライトヘビー級10回戦を制し、判定勝ちを収めた。
カタエフ(10勝0敗9KO)は、スコアカード上で2者が99-89、1者が98-90といずれも大差を付けてのユナニマス・デシジョン(判定勝ち・3-0)。この試合はDAZNでライブ配信された。
テレビ中継の初戦でインパクトを残すべく、カタエフは序盤から攻勢に出た。序盤最も印象的だったのは、ボディへの左フックから頭部への右という鮮やかなコンビネーション。パラシオ(14勝4敗11KO)は右を振ろうとしたが、その隙を突かれた形だった。
カタエフの早いラウンドでの猛攻にも、パラシオは耐え続けた。2023年6月にはケビン・ルレ・サジョとの12ラウンドをフルに戦っており、簡単には倒れないことは明らかだった。
『The Ring』誌のライトヘビー級ランキングで10位にランクされているカタエフは、その後も鋭いコンビネーションを浴びせたが、第3ラウンドにはパラシオの強烈なワンツーを受け、ロープ際まで後退する場面もあった。
しかしその直後の第4ラウンド序盤、カタエフは自身の素早いワンツーでパラシオのアゴを打ち抜き、最初のダウンを奪う。
続くラウンドでは、試合を決めにかかるカタエフがパラシオとの偶発的なバッティングにより右目上をカット。その後もパラシオは再び攻勢に転じ、終盤には再び連打を浴びせて主導権を奪い返す気迫を見せた。
第5ラウンドには、カタエフの左目の腫れが大きくなり、口呼吸も目立ち始める。ラウンド中盤にはローブローで減点1を受け、終了のゴング後にコーナーへ戻る姿には疲労の色が濃く表れていた。
それでもカタエフは手数を落とさず、第6ラウンドではボディと顔面へのヒットを重ねる。しかし前へ出続けるのはパラシオだった。
第7ラウンド、パラシオのプレッシャーが実を結ぶ。前進しながら右をクリーンヒットさせると、反撃に出たカタエフにも首を振って余裕のリアクション。反応で主導権を渡さない粘り強さが際立った。
だが、疲労が溜まる中でも、カタエフの基本に忠実なボクシングは崩れなかった。コンビネーション、カウンター、フットワークを駆使しながら試合を組み立てる。一方のパラシオも右を通して揺さぶりをかけるが、決定打に繋げる“第2波”の攻撃に欠けた。
終盤も、パラシオは打たれても前に出続け、まさに“打たれ強さ”の権化のような姿を見せる。カタエフがラッシュを仕掛けても、首を振って動じない。
最終ラウンド、カタエフのテーマは明確だった。前に出てくるパラシオの“ターミネーター”のような突進をいかにかわし、被弾せずに攻撃を組み立てるか。試合終了時、両者とも顔面は傷だらけで、消耗戦の10ラウンドを物語っていた。
そして判定は明確。ジャッジ全員がカタエフの勝利を支持し、ユナニマス・デシジョンで無敗記録を更新。だが、表情に喜びはほとんど見られず、まさに「勝ちはしたが、壮絶な試練だった」と言わんばかりの静かな勝利だった。