ハムザ・シェラーズとアンディ・リーは、初めての試合でコンビを試すにあたり、ゆっくりと慣らす余裕はない。
シェラーズは、7月12日にニューヨーク州クイーンズのルイ・アームストロング・スタジアムで開催されるザ・リング主催「Ring III」ペイパービュー大会のメインイベントで、WBCスーパーミドル級タイトル挑戦者決定戦として
エドガー・ベルランガと対戦するという大仕事を抱えている。この試合は、シェラーズにとってスーパーミドル級初戦であり、リーを新たにトレーナーに迎えての初陣でもある。
しかしこれまでのところ、シェラーズ(21勝0敗1分、17KO)とリーは、7月12日の
ベルランガ(23勝1敗、18KO)戦に向けて、順調に足並みを揃えてきた。
「アンディとは本当にうまくかみ合っている」と、シェラーズはクイーンズベリー・プロモーションのオールアクセスで語った。「お世辞じゃない。見ている人はお世辞だと思うかもしれないけど、正直に言って、アンディほど相性の良いコーチは今までいなかった。すごく楽なんだ。言われたことをやるだけでいいし、リングの外で散歩に行くときなんかも含めて、いい人なんだ」
26歳のシェラーズは、2月22日にサウジアラビアで
WBCミドル級王者カルロス・アダメスと引き分けた後、長年のトレーナーであったリッキー・フネスからリーへと師を変えた。15連続ストップ勝ちの勢いで世界トップクラスのミドル級選手として地位を固める道が整ったかに見えたが、実際には12ラウンドの大半でアダメスにアウトボックスされ、引き分けという判定も多くの人にとってはシェラーズに有利に働いたとみなされている。
環境を変える必要を感じたシェラーズはアイルランドのダブリンに向かい、そこでリーと出会った。
ジョセフ・パーカーやベン・ウィテカーも指導するリーにとって、シェラーズを指導できるチャンスは願ってもないものだった。
「彼は世界クラスのファイターである」とリーは語った。「そういう選手に指導を頼まれるのは光栄であり名誉である。もうビッグマッチが控えているし、これに勝てばさらに多くのチャンスが巡ってくる。とてもエキサイティングなプロジェクトであり、体格のポテンシャルと、技術を少し修正すればどれほどの選手になるかが見えていた」
元ミドル級王者のリーは、そもそもトレーナーになるべくしてなったともいえる。現役時代の大半を、殿堂入りトレーナーのエマニュエル・スチュワードのもとで戦い、名高い「クロンクスタイル」を体得していた。クロンクスタイルは、特にトーマス・ハーンズの台頭とともに広まったもので、ハーンズは史上初の4階級制覇を成し遂げた名王者である。スチュワードはレノックス・ルイスやウラジミール・クリチコなど数多くの殿堂入り選手・元王者を育ててきた。
身長6フィート3インチ(約191cm)、リーチ75インチ(約190cm)のシェラーズの体格は、6フィート1インチ(約185cm)、リーチ78インチ(約198cm)のハーンズに似ている。そうしたフィジカルの類似性もあり、リーとともにベルランガ戦に向けての準備では、クロンクスタイルの導入が多くの変化の中のひとつとなっている。
「いろんなことを矯正してくれた」とシェラーズは語る。「よく言うだろう、基礎に立ち返るって。まさにその通りなんだ。アンディはクロンクスタイルを学んでいて、それを自分にも教えてくれる。ただし、アンディ自身の好みや自分自身のスタイルも織り交ぜながらね。何でもかんでも言われた通りにやらされるわけじゃない。自分のファイトスタイルをそのままにしてくれて、それにプラスアルファを加えてくれるんだ」