フレイザー・クラークの頬骨を骨折させ、あごを脱臼させたあの右ストレート――それはファビオ・ワードリーが第1ラウンドのうちに決めた一撃だった。しかし、本当の痛みがクラークを襲ったのは、試合当日の夜ではなく、その翌週の火曜日の朝だった。
クラークとワードリーは、昨年3月に12ラウンドに及ぶ激闘を繰り広げ、英国ヘビー級の名勝負を生み出した。しかし、7カ月後にリヤドで行われた再戦は、それとはまったく対照的なものとなった。
再戦のストップは第1ラウンド2分28秒。ワードリーは、それまで無敗だったクラークを電光石火で粉砕し、近年でも記憶に残るほど衝撃的なKOでライバル関係に終止符を打った。
「言葉にするのは難しいけど、あれは人生最悪の夜だったよ、マジで」とクラークは『ザ・リング・マガジン』に語った。「シンプルな話さ。あれが気になったか? ああ、気になったよ。一生気にすることになるか? たぶん、そうだろうな。」
「誇り高い人間で、ファイターであるなら、あれは最悪の結果だ。あれよりひどい結果なんて、他にありえないよ。」
リヤドで緊急手術を受けた後、フレイザー・クラークはすぐに英国へ帰国した。空港には、心配していた家族が待っていた。そしてそのとき、33歳の彼はようやく、自分が味わった敗北の重みを実感したという。
「もう本当に……」とクラークは言い、言葉を探すように一度沈黙した。「昔、イーストエンダーズ(英国の人気ドラマ)で、フィル・ミッチェルがウォッカの瓶持って公園のベンチでヤケ酒してるシーンがあっただろ? 毎日あんな気分だったよ、本当に。」
「でも何が一番つらいって、人生で悪いことが起きても、世界は止まってくれないってことさ。月曜の朝に帰国したとき、空港からそのまま娘の学校に向かったんだ。試合のことを見て、娘はすごくショックを受けていたから、すぐに会いに行ったんだよ。」
「娘が何を見てしまったのかが心配でね、とにかく自分が無事だってことを伝えたかったんだ。それから息子にも会いに行って、家族で素敵な夜を過ごしたよ。本当に、あの状況がもっと悪くならなくてよかったと感謝したんだ。テレビで見た感じでは、もっと酷いことになっていてもおかしくなかったからね。信じられないかもしれないけど、たくさん笑って、愛にあふれた、いい夜だったよ。みんな、俺が無事に帰ってきたことをただ喜んでくれてた。」
「でもその翌日、火曜日になって、妻は仕事に戻り、子どもたちは学校へ行き、俺は一人で家に残されたんだ。カーテンを閉めて、『オンリー・フールズ・アンド・ホーセズ(※イギリスの人気シットコム)』をテレビで流して、ただ座ってた。携帯も1週間くらい触らなかったよ。通知が鳴りっぱなしでさ。しかも、あのKOシーンが嫌でも目に入ってくる。あれは見たくなかったから……本当に、暗い場所にいたと思う。」
試合直後、一部では「フレイザー・クラークはもう再びリングに立たないのでは」との声も上がった。彼は8月に34歳を迎えるが、重要なのは、そういった話が彼自身の口から出たことは一度もなかったという点だ。
もちろん、自分自身と向き合う時間は必要だった。しかし、プロでたった10戦というキャリアの中で味わった最初の敗北がどんなものであれ、彼の中には「引退」という選択肢は一度もなかった。
「自分が無敵だっていう根拠のない妄信、あるよね。俺はそれを認めることに恥は感じない」とクラークは語る。
「友人たちに聞かれたこともあるよ、全盛期のマイク・タイソンやアンソニー・ジョシュア、タイソン・フューリーと戦ったらどうなるって。自分なら勝てるって、何とかなるって思っちゃうものなんだよ。だから、そう考えてたことを恥じるつもりはない。
あんなこと(KO敗北)が起こるなんて、自分では想像してなかった。けど、それがボクサーの精神状態ってやつさ。でも今振り返ってみれば、ファビオ・ワードリーに対して俺はちょっとナイーブだった。彼は非常に危険なパンチャーだからね。でも、こういう経験こそがチャンピオンになるということなんだ――振り返って、学ぶ。今の俺はまさにその過程にいる。」
「俺はあの試合を“敗北”や“失敗”とは捉えていない。あれは、これからのキャリアを前に進めるための、人生で最大級の“学び”だったと思っているよ。」
クラークにとって朗報なのは、顔面の骨折に対してプレートを入れる必要がなかったことだ。回復は多くの予想よりもずっと早く、実際、彼は年内にスパーリングに復帰していた。そしてさらに嬉しいことに、彼が戻ってくるリングには、大きな試合のチャンスに満ちた活気ある英国国内ヘビー級シーンが待っている。
4月5日、マンチェスターではデビッド・アデレイとジャミー・TKVが英国王座を懸けて対戦する。その興行のメインは、クラークのアマチュア時代のライバル、ジョー・ジョイスだ。さらに翌月には、ロンドンのコッパーボックスでジョニー・フィッシャーとデイブ・アレンが、昨年12月にリヤドで行われた一戦のリマッチを行う予定。加えて、ディリアン・ホワイトやヒューイ・フューリーといった、クラークにとって潜在的な対戦相手となる実力者たちも控えている。
「俺たちは皆、似たようなレベルにいると思う」とクラークはうなずいた。「もしジョニー・フィッシャーがデイブ・アレンに勝てば、それもまた、ファンが観たいと思う素晴らしい英国国内のヘビー級カードになるはずだよ。」
「もう33歳だから、今の目標は“いい試合に出ること”、そして“その試合に勝つこと”だ。そして、それがどこへ自分を連れていくかを見ていきたい。でも“世界王者になる”という野望はまだあるのかって? もちろんさ。それは持っていなきゃいけない。でも、俺は現実主義者でもある。もしそのチャンスが来れば素晴らしいけど、今はまず競争力のある試合に出て、勝って、できる限りランキングを上げていく。それが先決だ。」
そんなクラークの再起の第一歩は、4月20日、BPパルス・アリーナで行われるガーナの強打者エベネザー・テテーとの一戦。もしここで2連敗となれば、英国国内での大舞台に戻るチャンスは大きく遠のく可能性がある。
クラークはこう付け加えた。
「テテーは、倒されるために来るような相手じゃない。だから、1秒たりとも彼を甘く見たりはしない。彼は相手をひどく見せることができるし、番狂わせを起こす力もある。だから俺は真剣に準備しているよ。ラフバラーでしっかり合宿してる。宿泊しながら、一人で集中して取り組んでる。」
「キャンプ生活は退屈だけど、俺はこの相手に最大限の敬意を払っている。きっちり勝って、自分がいるべき場所に戻るためにな。」