英国のボクサーがスポーツ界の偉人と対戦するとき、よく話題になるのが「もし勝ったら、それは英国ボクシング史上のどんな夜に並ぶのか?」という点だ。
ランドルフ・ターピンが伝説のシュガー・レイ・ロビンソンを破った有名な勝利、そしてロイド・ハニガンが無敗のウェルター級統一王者ドナルド・カリーを衝撃的にストップした試合などが、必ず引き合いに出される。
ファビオ・ワードリーのプロモーターであるフランク・ウォーレンは、もし元リクルート・コンサルタントでホワイトカラー・ボクサーだったワードリーが、経験の大きな差を乗り越えて、史上初めてプロとして無敗のヘビー級統一王者でありPFPスターの
オレクサンドル・ウシクを倒すことができれば、それはこれまでのどんな勝利をも凌駕するだろうと考えている。
「もし彼がそれを成し遂げたなら――それは世界ボクシング史上、最大の出来事になるよ。」とウォーレンは『ザ・リング』誌に語った。「英国じゃない、世界ボクシング全体でだ。アマチュア経験ゼロ。アラモ出身の名もなきジョー・ブロウ相手に数回ホワイトカラー戦をしただけで、21戦目にしてウシクの指名挑戦者になったんだ。もしウシクが彼と戦わなければ、ワードリーが王者に認定されるだろう。
まるでシンデレラ・ストーリーのようだ。彼は仕事をしながら学び、どの試合もほぼアンダードッグとして挑み、すべてを乗り越えてきたんだ。」
英国ボクシング界はずっと“ブルーカラーのヒーロー”の登場を待ち望んでいた。
WBO暫定王者のワードリー(20勝1分、19KO)は、誰もが身近に感じる存在だ。何百万人もの人々が昼間は9時から5時まで働き、夜は自分のスポーツの夢を追いかけている。何千人ものスリルを求めるティーンエイジャーや体形が崩れた40代が、チャリティーのホワイトカラー戦に参加し、週末の戦士に変わる。
もちろんワードリーは、実は“隠れたワールドクラスのアスリート”だったが、その物語はあらゆるスポーツファンの共感を呼ぶだろう。そして本人はすでに「ホワイトカラー出身という肩書きはもう卒業した」と話しているが、メインストリームに進出するには、このストーリーを何度も語り続ける必要がある。
「彼は人々と一緒にいるタイプなんだ」とウォーレンは言う。「大勢の取り巻きなんていない。普通に話すし、感じがいい男だよ。だけどね、何より彼は“戦士”なんだ。
心が強い。そしてみんなが忘れているが、あいつは“アゴ”も強い。パーカー戦でも何発も強打を食らっただろう。
もしウシクと戦えば、それは“クロスオーバー・ファイト”になる。誰もがウシクを知っているからね。そういう試合になるだろう。もしウシクが戦わなければ、ワードリーが王者になって、他の誰かと戦うことになる。
そのときは試合を組むのも簡単だよ。誰だってタイトルを懸けて戦いたいだろうから。ダニエル(デュボア)でも誰でもいい。ジョセフ・パーカーとの再戦だって構わない。あれはもう一度見たい試合だ。」
ワードリーが初めてボクシンググローブをはめたのは20歳のときだった。それだけに、もし10年早く始めていたらどんな選手になっていたのかと、多くの人が想像するのも無理はない。
彼は明らかに“吸収の早い”タイプであり、ベン・デイヴィソン・パフォーマンスセンターのロブ・ホジンズらのチームは、彼の粗削りな部分を見事に磨き上げてきた。しかし彼を危険で予測不能な存在にしているのは、リングで足を踏み込み、リスクを取る覚悟だ。
フレイザー・クラーク、ジャスティス・フニ、ジョセフ・パーカーといった選手たちは、長年トップアマや経験豊富なヘビー級とスパーや試合を重ねてきたが、ワードリーが彼らの予想どおりには動かないことを痛感させられた。
「彼は学ぶんだ」とウォーレンは言った。「多くの選手は、彼のパンチがどんな角度から飛んでくるか想定していない。型どおりじゃないんだ。
パーカー戦で言えば、あいつは良いフィニッシャーだけど、もっと正確に打ち込めていればなお良かったね。でも、それも少しずつできるようになっている。」