イングランド・イプスウィッチ――この壮観な凱旋が完全に水の泡になりかけたその瞬間、ファビオ・ウォードリーが神がかり的な右ストレートを放ち、ジャスティス・フニに対して歴史的な一撃逆転劇を演じた。

オーストラリア出身のフニは、この大舞台に圧倒されることはないと誓い、ウォードリーの愛するイプスウィッチ・タウンFCの本拠地での凱旋試合を、自身の名を知らしめる舞台にすると宣言していた。

激しい雨が一日中サフォークのこの地を覆い続ける中、フニはポートマン・ロードで優位に立ち、観客を静まり返らせながら、この一夜を完全な悪夢に変えようとしていた。

しかし、すべてが手の届かないところへ滑り落ちようとしていたその時、イプスウィッチ出身で間もなく父親になるウォードリーがキャリア最高の一撃を放ち、10回にフニをマットに沈めた。カウントに立ち上がろうとするフニの努力もむなしく、あまりに強烈な右ストレートにより、レフェリーのマーク・ライソンは試合続行を認めなかった。

「俺はウシクやフニみたいに華麗なボクシング技術はないかもしれない」とウォードリーは試合後に語った。「でも、踏ん張って、マウスピースを噛み締めて、勝つ方法を見つけることはできる。今夜それを証明したんだ」。

「ジャスティス・フニは素晴らしい選手で、作戦も完全に読んでいた。もっといいパフォーマンスができたはずだが、勝利への道を切り開けたのは事実だ」。

「彼は巧みな技術を持つボクサーで、自分の全てをぶつけてきた。予想以上にラウンドを取ってきたけど、こちらも軌道修正して、頭を切り替え、作戦に従って勝利を掴んだ」。

ウォードリーにとってキャリア最重要戦となったこの試合の準備期間中、彼のパートナーは第1子となる娘の出産を控えていた。それでもウォードリーは、トレーニングキャンプ中も集中を切らすことはなかったと語っていた。

この試合が、彼が長年待ち望んできたポートマン・ロードでの凱旋試合でなければ、状況は異なっていたかもしれない。マッチルーム時代からその実現を熱望していた舞台だったが、今回その夢を実現させたのはフランク・ウォーレン率いるクイーンズベリーであり、しかも相手はマッチルームの選手だった。

ウォードリー（19勝0敗1分、18KO）は当初ジャレル・ミラーとの対戦が予定されており、記者会見ではミラーが相手のディストラックを聞いたと勘違いして激昂し、両者は警備員によって引き離される場面もあった。だがその曲はAIによって生成されたもので、ウォードリー自身はまったく関与していなかった。そして結局、ミラーは肩の負傷を理由に試合を辞退した。

ポートマン・ロードで80年ぶりとなるボクシングイベント、しかもこれまでにない規模での開催となったこの試合には、それに見合う高い知名度と実力を備えた新たな対戦相手が必要となった。そこで選ばれたのが、当時WBOのランキング1位に位置していた無敗のジャスティス・フニだった。彼は即座にこの挑戦を受け入れたとされているが、共同プロモーターであるエディ・ハーンは、そもそもウォーレンがフニにこの話を持ちかけたこと自体が“異例のミス”だったと主張していた。

実力は申し分なかったものの、ミラーのような派手な言動がなかったため、ウォードリーとフニの試合週は比較的落ち着いた雰囲気で進行した。それでも、雨に打たれながらポンチョ姿で集まった地元ファンは熱気に満ちており、関心はまったく薄れていなかった。

午後8時半ごろには、イプスウィッチ・タウンFCの人気監督キーラン・マッケナがリングサイドに到着し、スタジアムの空気に火がついた。午後10時10分、地元の英雄ウォードリーが登場すると、歓声は最高潮に達した。

先に登場したフニは、雨の中を笑顔で軽くジョギングしながらリングへ向かったが、観客の「ウォードリー」コールに入場曲がかき消されるほどだった。その直後に登場したウォードリーは、かつてはリクルート会社に勤めながらホワイトカラー・ファイトに友人を連れて出場していた男であり、今では英国ボクシング界においてこの地域最大のスター選手の一人となっている。

イプスウィッチ・タウンのロイヤルブルーをまとったウォードリーは、得意の低く構えたガードスタイルで立ち上がった。一方、長年のアマチュア経験を持つフニは、テクニカルなスタイルを売りにするボクサーとされており、最初にヒットを奪ったのも彼の左フックだった。

体重は自己最高の248ポンドだったが、フニは動きも軽快で、出入りを繰り返しながらウォードリーの攻撃をかわしていた。第2ラウンド終盤には右ストレートをかすめる場面もあり、好調な立ち上がりを見せていた。

第3ラウンド終盤、ウォードリーが左フックをヒットさせると会場は再び沸き立ったが、フニはそれを耐え、直後の第4ラウンドではウォードリーの鼻筋をカットし、さらには強烈な右ストレートとあごへの左フック、そしてローブローで主導権を握った。

第5ラウンドでは観客の声援も落ち着き始め、フニが洗練されたプレッシャーで試合を支配し続けた。第6ラウンド終盤には右ストレートを再びヒットさせ、第7ラウンド序盤にはダブルジャブからのクロスで攻勢を強めた。

スタジアムは静まり返り、フニはますます自信を深めていた。鋭い右ストレートを繰り出し、ウォードリーは苦しい表情を浮かべながらも、粘り強く耐え続けた。

ウォードリーの持ち味のひとつは、窮地に追い込まれた時でも何かを起こす力を持っていることだ。そして今回もその真価を発揮した。10回1分42秒、ウォードリーは驚異的な一撃でフニをマットに沈め、逆転勝利を手にした。

「ほんの一瞬気を抜いただけだった」と試合後にフニは語った。「ファビオに敬意を表したい。素晴らしいファイターで、最後まで諦めず、勝利を掴み取った。彼にふさわしい結果だ」。

プロモーターのフランク・ウォーレンも「ディオンテイ・ワイルダーも驚くような一発だった。彼は大きなハートを持ち、また一人を倒した」と語った。

ウォードリーはこれでしばらく休養に入り、今月誕生予定の第一子の娘の誕生を待つことになる。しかしリングから遠ざかるのは長くはないだろう。おそらく今後9か月以内に、世界タイトル挑戦のチャンスが待っている。