イプスウィッチ(英国)——2025年6月7日(土)、ポートマン・ロードのピッチ中央で行われるジャスティス・フニとの一戦。その試合の結果に関係なく、
ファビオ・ワードリーの人生は数日後、大きな転機を迎えることになる。
というのも、イプスウィッチ・タウンの本拠地であるポートマン・ロードでキャリア最大の一戦である
ジャスティス・フニ戦を終えた直後、30歳のワードリーのパートナーが第一子となる娘を出産予定だからである。
試合準備中に早産となってしまう可能性があることから、そのタイミングについて指摘されると、ワードリーは一瞬顔を手で覆って苦笑いを見せた。サッカー用語を借りれば、今はまさに“スウィーキー・バム・タイム(緊張がピークに達する時)”なのだ。
「ちょっと気まずい話題だな」とワードリーは笑いながら語った。「うちの奥さんは、この試合日程にあまり納得していなかったんだ。
予定日は試合の一週間後なんだけど、場所がポートマン・ロードだって聞いたら『それは特別な試合よね。でも……』って感じだった。
第一子は遅れる傾向があると言われてるけど、実際のところどうなるかは誰にも分からない。この段階では、なるようにしかならない。俺のやるべきことは、まずこの試合に勝つことだ。」
「2025年は本当にクレイジーな一年になるし、6月だけ見てもとんでもない。でも俺は父親になる準備はできてるよ。親友にも最近娘が生まれてね。あの子が成長する姿を見て、自分もそうなると思うと、正直めちゃくちゃ感傷的になった。特別な体験になると思うし、すごく楽しみにしてる。」
プロ戦績19戦の中で、ワードリー(18勝0敗1分、17KO)にはソフトな一面はほとんど見られなかった。昨年10月12日、リヤドでのフレイザー・クラークとの再戦では初回KO勝利を収め、その破壊力をあらためて証明し、
『The Ring』誌のランキングでヘビー級10位に名を連ねた。
だが、娘の誕生を控えた今、そのファイターとしての本能に変化は現れるのだろうか。
「両立はできると思ってるよ」とワードリーは『ザ・リング・マガジン』に語った。「俺にとってはダブル・バブルさ。
つまり、家族と一緒にいる時は優しくて柔らかい父親になる。でもトレーニングや試合となれば、それは真逆の顔を見せる。
むしろ、それがあることで、俺はもっと強く、もっとモチベーション高く、もっと貪欲になれると思う。なぜなら、もう俺だけの人生じゃない。娘が俺に頼ってくる。俺が彼女のために戦わないといけない。」
ワードリーにとって、その「戦い」とは、代役として登場する無敗の挑戦者ジャスティス・フニとの一戦である。
両者は来週、ポートマン・ロードで拳を交える予定だ。フニは、この大舞台での凱旋試合を台無しにするチャンスがあると豪語しているが、ワードリーは地元の期待を背負うプレッシャーこそが、自分の力を引き出す原動力になっていると語っている。
「もちろんプレッシャーはある。でも、プレッシャーを感じられること自体が名誉だ。ここで戦えること自体が光栄だ。
俺はキャリアを通じてプレッシャーの中でも実力を発揮できることを証明してきたと思っている。
俺はそういうのが好きなんだ。照明がまぶしく、舞台が大きければ大きいほど、俺の真価が発揮される。そういう時こそ、俺の持っているハート、根性、決意、そして集中力が最大限に引き出され、全開で戦えるんだ。
今、俺はキャリアの中でも最高の状態にある。このプロの世界で、これまでに本当に多くの経験を積んできた。イギリス各地で様々な試合をこなしてきたし、リヤドでも戦った。ジブラルタルでも戦った。ロンドン、シェフィールド、他にもいろいろな場所で戦った。
スモールホールでも、ヨークホールでも、ありとあらゆる舞台を経験してきた。今は、それらすべての経験を一つの試合に凝縮する時なんだ。それが6月7日に実現する。
そして、その試合が終わった時、ようやく父親としての新たな一歩を踏み出すことになる。