アトランティックシティ(ニュージャージー州)-土曜夜の試合では、イマンタス・スタニオニスがジャロン・エニスとボクシング技術で渡り合った方が良い場面が出てくるだろう。
無敗のIBFウェルター級王者エニスは、スタニオニスが2016年リオデジャネイロ五輪後にプロ転向して以来、最も危険な相手である。WBAウェルター級王者としてキャリア最大の一戦に挑むスタニオニスは、エニスとの打ち合いが自らを追い込む危険な展開につながることを理解している。
だが、30歳のリトアニア人は、それでも打ち合いをやめられない。
「自分は“メキシカンスタイル”のブロウラーだと思う」とスタニオニスは『ザ・リング・マガジン』に語った。「ボクシングは分かっている。経験もある。でも、自分はいつも打ち合うのが好きなんだ。なぜなら、ファンに興奮を与えたいからだ。言った通り、勝ち負けはどうでもいい。自分が気にしているのは、ファンに最高の試合を見せること。それだけだ。自分のすべてを懸けて戦う。」
スタニオニスは、自身が対戦するジャロン・エニスとの試合が、アルトゥーロ・ガッティがかつて何度も全身全霊を捧げた会場、ボードウォーク・ホールで行われることを十分に理解している。故ガッティは1990年代半ばから2007年7月のラストファイトまで、HBOを中心に数々の名勝負を繰り広げた。エニス対スタニオニス戦は、ガッティが11度戦ったこの1万2千人収容のボードウォーク・ホールで行われるボクシングイベントとしては、2014年11月のセルゲイ・コバレフ対バーナード・ホプキンスによるライトヘビー級タイトル戦以来、最も意味のある試合となる。
エニス(33勝0敗、29KO、1無効試合)は2023年7月、このボードウォーク・ホールの上階にある3,500席のエイドリアン・フィリップス・シアターでメインイベントを務めた。その試合では、ベネズエラの強打者ロイマン・ビジャ(27勝3敗、25KO)を10ラウンドでノックアウトしている(「ショウタイム・チャンピオンシップ・ボクシング」)。
一方、スタニオニス(15勝0敗、9KO、1無効試合)は同じ夜、テキサス州サンアントニオのAT&Tセンターで、エニスのライバルであるヴァージル・オルティス・ジュニア(23勝0敗、21KO)を相手にWBAウェルター級王座を防衛する予定だった。しかし、オルティスは最終記者会見前夜に入院し、試合は中止に。スタニオニスは、キャリア最高額となる予定だった175万ドルの報酬を失い、その後約10か月間リングから遠ざかることになった。
スタニオニスは、2022年にテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムでラジャブ・ブタエフ(ロシア)にスプリット判定で勝利しWBA王座を獲得して以来、ほぼ3年の間にわずか1試合しかしていない。この長期のブランクにより、スタニオニスの試合数はエニスの半分以下にとどまっている。だからこそ、彼はエニスが育ったノース・フィラデルフィアから1時間もかからない場所でのこの一戦を、喜んで受け入れた。
ドラフトキングスでは、エニスは6対1のオッズで有利とされている。しかし、スタニオニスはオッズメーカーの見解や、SNS上の“トロール”たちの発言など気にしていない。
「人々が話題にしてくれるのはいいことだ」とスタニオニスは語った。「名前が挙がるのは、いい意味でも悪い意味でもね。いつも言っているけど、良いことをしていれば人は話す。それがポジティブでもネガティブでも関係ない。全部の情報を受け止める。無視して自分の人生を楽しむこともできるし、コメントを全部見て『なんてことだ! 侮辱された、傷ついた』って言うこともできる。でも自分は気にしない。笑うだけさ。だってこれは厳しいスポーツなんだ。俺たちはこの狂った世界で生きているんだから。」
DAZNは、エニス対スタニオニス戦を午後8時(東部時間)/午後5時(太平洋時間)開始予定のメインイベントとしてライブ配信する。
この試合では、エニスのIBF王座、スタニオニスのWBA王座に加え、『ザ・リング・マガジン』の空位のウェルター級王座も懸けられる。エニスは『The Ring』のウェルター級ランキングで1位、スタニオニスは2位にランクされている。
Keith Idecは『ザ・リング・マガジン』の上級ライター兼コラムニストである。X(旧Twitter)では @idecboxing で連絡できる。