モントリオールでのフランチェスコ・パテラ戦に勝利したことで、ズミトリー・アサナウはライト級の有力コンテンダーの一角として地位を確立する。試合前の時点でランキング13位につけていたが、この勝利により次回のランキング発表ではトップ10入りも見込まれる。
しかし、より実践的な意味では、圧倒的な勝ち方が「誰がこの“ワスプ”を止められるのか?」という疑問を呼び起こした。
滑らかなボクシングと巧みなフットワークを好むファンにとって、ベラルーシ代表として五輪に2度出場したアサナウは、美しいパフォーマンスを披露した。小さめのリングで知られるモントリオール・カジノで、スタミナに定評のあるパテラを封じ込めたのである。判定では、1人のジャッジが根性を評価して2ラウンドをパテラに与えたが、残る2人のジャッジは10ラウンドすべてをアサナウとし、100対90の完封勝利となった。
アサナウは、リング内での蜂のような素早く浮遊する動きと鋭く刺すようなパンチから「ワスプ(スズメバチ)」の異名を持ち、この夜はパテラというヨーロッパレベルの強豪を相手に、その長所を存分に発揮した。
「彼は世界でも最高レベルのフットワークを持っているし、狙いすましたジャブもある。ズミトリーは決して最強のパンチャーではないが、十分なキレを持っている。試合の第1ラウンドを終えた時点でパテラの顔を見れば、ジャブが効いているのが分かったし、対策がなければ長い夜になると予想できた」と、アサナウのトレーナーであるサミュエル・デカリー=ドレは『リング』誌に語った。「もしリングのサイズが24フィート四方だったらどうだろう?誰が彼に触れることができる?彼はあと10ラウンドでも同じ動きを続けられる。」
デカリー=ドレは師匠マーク・ラムゼイと共に、アサナウを世界戦線へと早期に送り込むべき有望株として見出した「Eye of the Tiger」のブレーンの一員である。ラムゼイはアサナウを、プロモーターのカミーユ・エステファンに「小型のドミトリー・ビボル」と表現し、エステファンは「それだけで十分だった」と振り返る。
現在28歳のアサナウは、アマチュア時代にアンディ・クルスやムロジョン・アフマダリエフらに勝利した経験を持ち、100勝以上を記録している。2023年までアマチュアで現役を続けており、IBAプロにも一時参戦していた。
もちろん、アマチュアのエリートでありながら、プロ転向に本気になれない、あるいは関心の薄い選手も存在する。アサナウがそのタイプなのか、それとも元対戦相手のクルスのようにスムーズにプロの世界へ適応できるタイプなのかが問われていた。
デカリー=ドレの見解では、アサナウは後者のタイプであり、プロへの移行はほぼ完了しているという。仕上げの装飾こそまだ残っているが、すでに入居可能な家のように、アサナウはすでにトップ選手たちと戦える準備が整っていると感じている。ただし、その電話がかかってくるまでの間に、細部の完成度を高めるつもりだ。
「時間の問題というよりも、誰と戦うか、そして彼の“道具箱”がどれだけ完成しているかの方が重要だと思う。現時点でもかなり完成しているが、まだ微調整が必要だ。少しアマチュアのスタイルが残っている。彼にはしっかりとパンチに体重を乗せられるようになってほしい。彼は非常に優れたパワーを持っている。フィジカル・トレーニングでは素晴らしいアスリートなのに、リングの中では動きすぎてそれが見えにくい」とデカリー=ドレは語る。
アサナウを今後どう動かすべきか判断するために、デカリー=ドレはプロモーターのエステファンに、今回の試合相手としてフランチェスコ・パテラを指名した。パテラは過去にキーション・デイビスやゲイリー・カリーとも戦っており、実力を測るには格好の相手だった。デイビスも2023年の試合でパテラを圧倒し、ダウンを奪ったが、デカリー=ドレはアサナウの今回のパフォーマンスも、それに匹敵すると評価している。
「キーション・デイビスを除けば、今回のパテラ戦は彼の過去の敗北の中でも最も優れた内容だったと思う。もちろんデイビスはダウンを奪ったりしたけどね。ただ、試合のある場面では、デイビス戦の方が競り合っていたように見えた。なぜなら(アサナウは)ジャブや角度を使って遊ぶように戦っていて、危険な場面が一度もなかったから。デイビスはプレッシャーをかけていたけど、そのぶん打ち合いが多くなって、危険な場面もあった」とデカリー=ドレは語る。
「ジムには才能ある選手がたくさんいるから、みんながお互いを見ている。スパーリングの後には、『今の動きすごかったね』とか『さっきのパンチ3回くらいもらっちゃったけど、あれ良かった』みたいに声を掛け合っている。そうやってお互いに助け合いながら、同じ方向に向かって進もうとしている。だからみんなが進化できるんだ。」