どの階級からでも数人のボクサーを選んでみれば、誰一人として同じ考え方をしていないことにすぐ気づくだろう。
トレーニング方法からファイトスタイルに至るまで、それぞれが異なる。しかし、一つだけ共通しているのは――「ギブアップは許されない」ということだ。
残念ながら
ダニエル・デュボアには、まさにその「ギブアップ」の評判がついて回っている。
その評判が広まり始めたのは、2020年後半の
ジョー・ジョイス戦からだった。試合の序盤こそデュボアが優勢だったが、ジョイスはじわじわと彼を追い詰めていった。
そして第10ラウンド、デュボアの左目は眼窩底骨折により完全に腫れ上がり閉じてしまった。膝をつかされ、そのままカウントアウトされた。
この出来事をきっかけに、デュボアが「ギブアップ癖があるのでは」という声がささやかれるようになった。その疑念は2023年のオレクサンドル・ウシク戦でさらに強まった。第9ラウンドでウシクにストップされたことで、その評判に拍車がかかった。
ウシク戦で“勇敢に散った”とは言い難い内容だったにもかかわらず、デュボアはその後立て直しに成功した。
ジャレル・ミラー、
フィリップ・フルゴビッチ、そして
アンソニー・ジョシュアを相手に、3連続ノックアウト勝利を挙げたのだ。
特にジョシュアに勝利したことで、彼はある“称号”を手に入れることとなった。それは、ウシクが2024年5月に
タイソン・フューリーとの初戦後に返上したIBF世界ヘビー級王座だった。
これらの勝利によって、デュボアは再びトップ戦線に返り咲き、オレクサンドル・ウシク(23勝無敗、15KO)との再戦のチャンスを手にした。
しかし、土曜夜にロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われた再戦では、デュボア(22勝3敗、21KO)は4団体統一王者に完全に圧倒され、第5ラウンドでノックアウトされてしまった。
この試合をリングサイドから見届けたのが、ベテランヘビー級コンテンダーの
デレク・チゾラだった。彼はデュボアのボディランゲージ、ちぐはぐな試合プラン、そしてそのすべてに目を向けていた。
チゾラは、あの重たい「レッテル」を再び元王者に貼らざるを得なかった。
「奴はギブアップした、まただ」とチゾラはSeconds Outのインタビューで語った。「完全にギブアップしたよ。」
チゾラはイギリス国内で“国民的存在”として扱われており、勝っても負けても決して諦めないその姿勢でファンの心を掴んできた。彼は誰に対しても、自分と同じように最後まで戦い抜いてほしいと願っている。
特にチゾラが失望したのは、2024年9月21日に同じウェンブリー・スタジアムでデュボアがアンソニー・ジョシュアを破壊したあの姿を見ていたからだった。元統一王者を第5ラウンドでノックアウトしたあの圧巻の勝利を、今回も再現してくれると期待していたのだ。
「今回は勝つ舞台が整っていた」とチゾラは続けた。「リングに入った瞬間から、彼は諦めていた。AJを追い詰めた時のような獰猛さがなかった。勝てる試合だったのに。」