2024年9月、ウェンブリー・スタジアムで9万6000人の観衆の前で
アンソニー・ジョシュアをノックアウトする数時間前、
ダニエル・デュボアと父スタンはエセックスの自宅でパーティーを開いていた。
チーム・デュボアはその時点では知らなかったが、それはその夜に起こる出来事──すなわち、英国に新たなヘビー級スーパースターが誕生する前祝いのようなものだった。ジョシュアは衝撃的な一撃でロープへ吹き飛ばされ、3か月後にはタイソン・フューリーもオレクサンドル・ウシクとの
再戦で世界王座を奪還できずに終わった。
今週末、再びパーティーの準備が進められている。というのも、デュボア(22勝2敗、21KO)は2024年8月に一度敗れているウシク(23勝無敗、14KO)と、
再び4団体統一ヘビー級タイトルを懸けてウクライナ人のボクサーを対戦するからである。
「AJ戦の前に家でちょっとしたお祝いをしたんだ」とデュボアは
『ザ・リング・マガジン』に語る。「試合当日だった。父が知り合いたちを大勢連れてきてくれて、音楽もあって食事も美味しかった。今回も同じことをやる予定だ。何人来るかはわからないけど、みんなエネルギーに満ちているよ。
俺はあまり食べないけどね、満腹でリングに上がるわけにはいかないからな」
今回の
ウシクとの再戦は、母国イングランドで行われる。デュボアはナショナル・スタジアムで連続してメインイベントを務める史上初のボクサーとなる。もし勝利すれば、名実ともに「ウェンブリーの王者」となるだろう。
「これは歴史的な瞬間になる。俺がウェンブリーで勝てば、そこは俺のホームになる。今まではジョシュアのホームで、彼が“主役”だった。でも、これからは俺のものだ」とデュボアは続ける。
「今でも俺のことを“主役”として認めていない人が多い。だからこそ、俺はその座に自分の名を刻まなければならない……俺こそが主役だ。なぜそう思ってもらえないのかは分からないけど……ずっとそうだった。人々はウシクに負けたことを話題にして、『彼は立ち直るだろう』とか言っている。でもな、俺にはそれを正すチャンスがある。そして必ずやり遂げるつもりだ」
デュボアがポーランド・ヴロツワフ・スタジアムで行ったウシクとの初戦は、第9ラウンドTKOでの敗北に終わった。ロンドン生まれの剛腕ファイターにとって、それはキャリア2度目の黒星となった。この試合では、彼の闘志や、リング上での過酷なプレッシャーに対する耐久力について再び疑問が投げかけられた。第9ラウンド、ウシクのジャブを受けてデュボアは膝をつき、ルイス・パボン審判が数秒後に試合をストップしたことで、敗戦が決定づけられた。
この試合は、トレーナーであるドン・チャールズとの初コンビ戦でもあった。チャールズは、今年4月末に行われた再戦発表の記者会見で、過剰なほどに熱くなっていた。62歳のチャールズは今でも、第5ラウンドでウシクがローブローを受けたとされる場面について、あれは演技だったと主張している。彼はそれを合法的なボディショットであり、ウシクが意図的にダメージを装って回復の時間を稼いだと信じて疑わない。
あの敗戦から14週間の準備期間を経て、デュボアとチャールズは次々と勝利を重ねてきた。ジャレル・ミラー、フィリップ・フルゴビッチ、そしてアンソニー・ジョシュアをノックアウトで倒し、ウシクが返上したIBF王座も獲得した。
ミラー戦とフルゴビッチ戦では、デュボアは深刻なピンチに陥った場面もあったが、最終的にはいずれもストップ勝ちを収めた。その2戦での激闘が、ジョシュア戦での自信に繋がったことは間違いない。
そして今、その道は再びウシクへと戻ってきた。ウシクはデュボア戦後にタイソン・フューリーに2024年5月、初黒星を与えて4団体統一王者となり、12月の再戦でも同様に勝利を収めた。
「(ドンとここにいるのは)まさに巡り合わせだ。星がすべて揃って、物事が再びひとつに繋がったような感覚だ」とデュボアは付け加える。「最初に戻ってきたような気分だ。だからこそ、自分の仕事をやり遂げ、歴史を刻むのが楽しみだ」
「これはとてつもなく大きな試合だ。素晴らしい夜になるし、偉大な勝利になる。
彼を倒し、ノックアウトし、すべてに終止符を打つのが楽しみだ。長い時間をかけてこのためにトレーニングしてきた。彼にもう一度手をかけるのが待ちきれない」
肉体的には、デュボアはまさにボクシング界で頂点を極められるだけの素質を備えている。
疑問視されてきたのは、彼のメンタルである。しかし、2023年8月以降、その疑念は徐々に──そして確実に──払拭されつつある。
ジョシュア戦での破壊的なKO勝利に至る準備期間中、27歳のデュボアは、ロンドン北部郊外にあるチャールズの農場ジムから遠くに見える、約2000トンの重さを誇るウェンブリー・スタジアムのアーチを、トレーニング前に毎日じっと見つめていたという。
そして今でも、彼はその巨大なアーチへの執着が続いていることを認めている。
「今でもあのサインを毎日見てるよ。じっと見つめているんだ」と彼は語る。
「長い間、ずっと努力してきた。俺たちは“勝利”のために準備してきた。負けて不機嫌な顔で帰るなんてことは考えていない」