ボクシングは、必ずしもパンチ力や技術の高さだけで勝敗が決まるスポーツではない。
もちろん、それらも重要だが、とくにエリートレベルの戦いでは、勝利のためにもう一歩踏み込む要素が求められる。
両者が疲労困憊し、息を切らしながら迎えるチャンピオンシップラウンドでは、まさにトレーニングキャンプで積んだものがものを言う。
キャンプは、選手の弱点を矯正し、戦術を練り上げ、そして限界まで自分を追い込むための場だ。エドガー・ベルランガはいま、その真っただ中にいる。
これまで、ベルランガのキャンプ地はニューヨークの地元からフロリダ、その他様々な場所を転々としてきた。だが現在は、コロラド州ボルダーでの過酷なトレーニングにやりがいを感じている。
次に対戦する相手はハムザ・シェラーズ。長身で細身、そして非常に危険な存在だ。
ベルランガ(23勝1敗、18KO)は一切の油断を排して臨もうとしている。
シェラーズが「頭を吹き飛ばす」と豪語する中、28歳のベルランガは再びコロラドに戻り、懸命にトレーニングに励んでいる。7月12日の試合までは、まだ十分な時間が残されている。
「今、人生で最高のコンディションに仕上がってきてる」と、ベルランガは自身の名前を冠したYouTubeチャンネルで語った。「必要なら24ラウンドでも戦えるよ」
イングランド出身のハムザ・シェラーズ(21勝0敗1分、17KO)は、見た目には圧倒的な存在感があるわけではないが、かつてミドル級タイトルにも挑戦した経験を持ち、試合を主導するペース配分に長けたファイターとして知られている。現在のトレーナーであるアンディ・リーは、2017年に現役を引退するまで、自らの代名詞とも言えるコンディショニングで評価を得ていた。
世界タイトル戦線で戦った経験を持ち、現在は後進の育成に力を注ぐリーは、謙虚で物静かな人物として知られているが、ベルランガはその姿勢を「偽善的」だと見ている。
実際には、リングで対峙するのはシェラーズ一人だが、ベルランガは、もし7月12日にもう一人と同時に戦えと言われても対応できるほどの状態に自分を仕上げるつもりだ。
「ハムザをぶっ倒して、アンディ・リーも一緒にやっつけてやるさ」とベルランガは言い放った。