今回、シャーネカ・ジョンソンはジャッジの手に勝敗を委ねることはなかった。オーストラリア・シドニーのクドス・バンク・アリーナで行われた試合で、ニーナ・ヒューズを第7ラウンドTKOで下し、WBA世界バンタム級王座の防衛に成功した。
この試合は、ジョージ・カンボソスJr対ジェイク・ウィリーのアンダーカードとして行われ、DAZNでライブ配信された。
ヒューズはリマッチとなる今回の試合を前に、前回のような判定トラブルが再び起こることを懸念していた。入場時にはボブ・マーリーの『Three Little Birds』をBGMに、まるで自分に「心配いらない」と言い聞かせるかのようにリングへ向かった。
実際、ヒューズ(6勝2敗2KO)は試合前のインタビューで「判定がまた不公平になるのでは」との不安を吐露していた。彼女たちの初戦では、発表ミスにより一度は英国のヒューズに勝利が告げられたが、アナウンサーのダン・ヘネシーが訂正し、最終的に勝者はジョンソン(17勝2敗7KO)であると発表されたという経緯がある。
だが、今回はそのような混乱や疑念の入り込む余地は一切なかった。
第1ラウンドから両者は距離を置くことなく激しく打ち合い、試合はハイペースで幕を開けた。ジョンソンは手数とアグレッシブさで相手を圧倒しようとし、ヒューズも応戦したが、彼女はジャブを軸に展開を組み立てたい意図が見えた。
第2ラウンド序盤、ジョンソンの強烈な右が炸裂するも、ヒューズはこれに耐える。終盤にはジョンソンの手数がやや落ち、ヒューズもカウンターを返して見せ場を作った。
だが、第3ラウンドは完全にジョンソンのラウンド。前進を続けながらインサイドで主導権を握り、やや小柄で年上のヒューズを下から打ち抜く。ラウンド終了時には、ヒューズの鼻から激しく出血していた。
第4ラウンドもジョンソンのワンサイド展開。強烈な右を皮切りに、パワフルなパンチを次々とヒットさせた。ジョンソンは明確なミッションを持ってリングに上がっており、顔面を真っ赤に染めたヒューズは守勢に回るのがやっとの状態だった。
ジョンソンの連打に対して、ヒューズはクリンチでしのぐのが精一杯となり、第5ラウンドではクリンチの多用により減点1が科される。
第6ラウンド前、ヒューズ陣営のセコンドは明らかに動揺していた。エセックス出身のヒューズに対し、トレーナーのケビン・リリーは「“大丈夫”なんかじゃない。何か見せてくれ」と檄を飛ばした。
一方のジョンソンは、ラウンド終了ごとに落ち着いた表情を見せていた。すべてのラウンドを取っていたが、まだ仕事は終わっていないという顔つきだった。第6ラウンドも展開は変わらず、ジョンソンが前に出てパンチを当て、ヒューズはカウンターを狙うがスペースを作れず苦戦。
そして迎えた第7ラウンド。42歳のヒューズは完全に流れを失い、ジョンソンの予告通りの“決着”が訪れる。ヒューズ陣営はタオルを投入し、試合はジョンソンのTKO勝利で幕を閉じた。
ヒューズは悔しさを隠し切れない表情でコーナーに戻った。だが、自身でも初戦とはほど遠いパフォーマンスだったことを認めざるを得なかった。
試合後もなおWBA世界バンタム級王者の座を守ったジョンソンは、いよいよ統一戦線へと動き出す構えだ。長きにわたった“ニーナ・ヒューズ編”に終止符が打たれた今、視線は次なる頂へ向けられている。
「夢のような気持ちよ。今夜この勝利を祝えることが本当に感慨深い。今回は絶対に判定で揉めない形で決着をつけたかった」とジョンソンは試合後に語った。
「次はどのベルトでも構わない。チームがベストだと判断する選択に従うだけ。全部のベルトが欲しい。今年は年に1試合じゃなく、2回か3回は戦いたいわ。」