ソムサック・シッチャチャワル — 2006年10月4日、タイ・ワット・バンライ開催|WBA世界スーパーバンタム級タイトル戦
2006年初頭、ソムサック・シッチャチャワル(46勝1敗1分、36KO)は、フランス・パリで長期王者マフヤール・モンシプールを10ラウンドで衝撃的にストップし、WBA世界スーパーバンタム級王座を獲得。この試合は後に『
ザ・リング・マガジン』の「年間最高試合」に選ばれた。
一方、当時5連勝中だったセレスティーノ・カバジェロ(24勝2敗、17KO)は、WBA暫定王座を獲得し、ヨベル・オルテガに判定勝ち(12回)を収めた後、2006年2月にロベルト・ボニージャとの初防衛戦を8回終了TKOで成功させていた。
両陣営は王座統一戦の合意に至り、試合はシッチャチャワルにホームアドバンテージが与えられる形でタイ開催が決定。
「それまでパナマでは暫定王座の防衛戦で2万5千ドルの報酬だったけど、ソムサック戦では10万ドルもらえた。当時としては最高額だった」とカバジェロは『ザ・リング』誌に語っている。
パナマで、トレーナーのセルソ・チャベスの指導のもと調整を行っていたカバジェロは、首都パナマシティからロサンゼルスまで6時間のフライト、その後13時間かけて台北へ、さらに3時間をかけてタイへ到着。
母国から約1万1,000マイル離れた敵地に乗り込んだカバジェロは、12時間の時差に順応するため、試合の12日前に現地入りしていた。
「旅の間、すごくリラックスしていたよ。準備がしっかりできていたからね」とカバジェロは語る。「簡単だった。パナマを出る時に、すでに腕時計をタイ時間に合わせていたんだ。ロサンゼルスには夜に着いて、翌朝には台湾に向かった。タイ時間の昼間は一切寝ず、夜だけ寝る。パナマを出てからフライト中もずっとそのリズムを守っていた。
到着したのは明け方で、2時間しか眠れなかったけど、朝6時半には公園でジョギングしていたよ。」
カバジェロとチームは、バンコクのナイトライフで有名な観光エリア「ナナ通り」のホテルに滞在していたが、それが気になることはなかった。
「俺は休暇でタイに来たんじゃない、世界タイトルを獲りに来たんだ。ナナ通りは簡単なことだったよ」と彼は説明した。「練習だけに集中していて、何も気が散ることはなかった。」
滞在中のカバジェロは非常にストイックで、食材を自分で買って、食事にも気を遣っていた。
とはいえ、現地での観光や風習にも触れ、チームと一緒に楽しんだ一面もあった。
「タイは物価が安くて最高だよ」と彼は言う。「毎日トゥクトゥクに乗ったし、モールに行くために地下鉄も使った。屋台の人たちがその場を離れても、誰も品物に手を出さないのを見て驚いた。
寺院や公園の建築も大好きだった。湖のそばの公園にはトカゲがいて、すぐ近くまで来るんだ。ちょっと離れたよ(笑)。
あと、俺のコーチのチャベスに、正体を教えずに揚げた虫を食べさせたこともある(笑)」
試合はタイの僻地、ワット・バンライという仏教寺院で行われた。
「タイへの旅は本当に長かった」と彼は振り返る。「試合当日は3時間の移動が必要だったんだけど、タイ側はその移動に1時間も余分にかかったんだ。ウォームアップする時間もほとんどなかった。」
リングに上がってからも不利な状況は続いた。
「俺のコーナーには直射日光が当たっていたのに、ソムサックの方には日陰があったんだ」と彼は語る。「暑さも厳しくて、まぶしくて視界が悪く、下を向いているしかなかった。リングで15分から20分は待たされたよ。」
試合が始まると、カバジェロは作戦通り冷静に戦った。
「トレーナーのチャベスに、序盤はパンチをもらわないように言われてた。あいつには明らかにパワーがあったからね」とカバジェロ。「だから距離をとってボクシングをして、動きを見切った。」
そして3回、カバジェロは試合の流れを決定的に変えた。ソムサックを3度倒し、経験豊富なレフェリーのジョン・コイルが1分48秒で試合をストップした。
「最初の一撃が入った瞬間、これは倒せるって確信したよ」と彼は語る。「最後はストレートの右で決めた。彼の鼻の中隔を骨折させたんだ。」
「タイトルを獲ることは夢のようだった。タイで世界王者になったパナマ人は今までいなかったから、誇りだったよ。」
だが、その喜びには小さな中断があった。
「試合が終わって30分後、バスを探していたら、ソムサックが病院に運ばれてて、俺たちは2時間半も放置された」と彼は思い返す。「でも幸運にも、タイ在住のパナマ領事が家族と一緒に試合を観に来ていて、15人乗りのバンを持っていたから、それに乗って帰れた。」
「そのあと、プロモーターが夜11時半ごろにホテルに来て報酬を支払ってくれて、空港まで安全に送ってもらった。」
帰国したカバジェロは、祖国パナマの人々から英雄として迎えられた。
「祖国の心優しい人々や家族、友人たちに迎えられたんだ」と彼は誇らしげに語った。「今でも鮮明に覚えている、素晴らしい歓迎を受けたよ。」
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