井上尚弥と同階級、もしくはその近辺にいて、なおかつトップ選手と見なされているなら、いずれリングの向こう側に彼が立つ日が来る。そう覚悟しておくべきだ。そしてそのとき、彼の容赦ない攻撃性に晒されることになるのは間違いない。
そんな中、ニック・ボールは、自分こそが井上が“獰猛”になったときに互角に渡り合える選手であることを証明したいと願っている。
今月初め、ボールはTJ・ドヘニーとの試合で浮き沈みのあるパフォーマンスを見せた。純粋なボクシングの技術では、ボール(22勝0敗1分、13KO)が明らかに格上だった。しかし、試合が複雑になると、126ポンド級王者の彼は冷静さを保つことができなかった。
ボールがドヘニーを投げ飛ばしたり、奇妙な“キック事件”を起こした場面を除けば、試合内容はほぼ一方的だった。10ラウンドでのストップ勝ちを収めたあと、ボールは井上尚弥に階級を上げて自分と対戦するよう熱望していることを語り始めた。
日本のスターである井上の今後の動向には依然として不透明な部分があるが、もし彼が122ポンドの4団体統一王座を返上し、さらに4ポンド上のフェザー級に上がることを選べば、大方の予想では井上が有利と見られている。
キーワードは「大多数」であって、「全員」ではない。
少数派かもしれないが、カール・フランプトンは、ニック・ボールが井上尚弥にひれ伏して王座に敬意を表すようなタイプではないと信じている。むしろ、井上がめったに直面しないような厄介な問題をボールは突きつけるだろう、と自信を持っている。
夢の対戦の話はさておき、井上(29勝0敗、26KO)は自身の“王国”を守らなければならない。彼は5月4日、ラモン・カルデナスを相手に『The Ring』誌王座、IBF、WBA、WBC、WBOのタイトル防衛戦を行う予定だ。フェザー級への転級を検討する前に、あと数試合は現在の階級で戦うことになるだろう。
いずれの時点かで、誰かに敗れることがない限り、井上尚弥はニック・ボールの領域フェザー級に足を踏み入れることになる。そして、そのときボールが主要4団体のうちのひとつ、WBAの王座を保持していれば、井上が彼を標的にするのは間違いない。
もしその対戦が実現した場合、カール・フランプトンは、28歳のボールがそのベルトを簡単に明け渡すとは思っていない。むしろ、王座を守るどころか、井上の完璧な戦績に初めて土をつける可能性すらあると考えている。
「彼(ボール)には、井上に勝つ“非常に大きなチャンス”があると心から思う」
と、フランプトンは『Boxing News』のインタビューで語った。
「スタイルが試合を決める。そしてニック・ボールのスタイルは、井上にとって悪夢のようなものだ。あの試合はボールが勝てると思うし、俺の中では彼が本命だね」