カネロ・アルバレスは、自らの実績に大きな誇りを持っている。しかし、彼の心を最も喜びで満たすのは、ファンの笑顔だ。だが今週末、そこに笑顔はひとつも見られなかった。
土曜夜、アルバレスは自らの快適なテリトリーを離れ、サウジアラビアで
ウィリアム・スカルとの一戦に臨んだ。34歳の彼にとって、ベルトや報酬はもはや最大のモチベーションではない。むしろ、異国の地で新たなファンの前で戦うことこそが原動力だった。
その夜の対戦相手であるウィリアム・スカルは、見た目だけなら一流に映った。知名度こそなかったが、筋肉が体中から盛り上がり、冷静沈着な雰囲気を漂わせ、IBF世界スーパーミドル級王座をしっかりと保持していた。アルバレスは、そんなスカルが真っ向勝負に出てくることを期待していた。しかし、彼の期待とは裏腹に、スカルは試合を通して動き続け、ダンスのようなフットワークでかわし続けた。
アルバレス(63勝2敗2分39KO)は何度も両手を広げ、苛立ちをあらわにする場面があった。また、あきれたように笑う瞬間もあった。スーパーミドル級の全タイトルが懸かった大一番にもかかわらず、スカルが一向に打ち合おうとしないことに、彼は信じられない思いを抱いていた。
とはいえ、内容は決してベストとは言えなかったものの、アルバレスは最小限の仕事を果たして勝利を掴んだ。2度目の4団体統一王者となったことには満足しているが、試合展開には不満を隠せない。
「気分はいい。勝ったからな」と、アルバレスはFightHub TVのインタビューで語った。「最高の試合を見せようと努力したけど、そういう試合にするには両者が必要だ。でも結局のところ、勝ちは勝ちだ」
スカルとの間には年間最高試合を生み出すような化学反応は起きなかった。だが、アルバレスは次戦の相手が同じ戦法を採用しないことを願っている。
スカルがリングを去った直後、
テレンス・クロフォードがロープをくぐって現れた。ザ・リング・マガジンがジュニアミドル級1位にランクするクロフォードは、9月12日、ネバダ州ラスベガスのアレジアント・スタジアムでアルバレスに挑むことが決定している。
クロフォードは常に柔軟性のあるボクサーだ。慎重で技巧的なボクシングを見せることもできれば、相手を痛めつけて仕留める冷酷さも兼ね備えている。スカル戦の経験を踏まえ、アルバレスはクロフォードが「ウィリアム・スカル2.0」にならないことを強く望んでいる。
「そうならないでほしい」と、アルバレスは続けた。「観客はいい試合を求めているからな」