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ブレヨン・ゴーハムとデューク・タナー──“不可能”への夢を懸けた闘い
特集記事
Corey Erdman
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ブレヨン・ゴーハムとデューク・タナー──“不可能”への夢を懸けた闘い
チャールズ “デューク” タナーが終身刑を受けて刑務所の独房に座っていたとき、彼は自由と愛する人々のために希望を捨てない覚悟を決めた。自由の身になること、ましてや再びリングに立つことなどは、政治家や立法者たちの手に委ねられ、独房の中で消えてしまうかもしれないと悟りながらも、彼は息子と甥の夢はまだ自分の手で育てることができると信じていた。


2004年、タナーは逮捕され、2年後に暴力を伴わない薬物犯罪(販売の共謀および販売目的での所持)により終身刑を言い渡された。当時、タナーは19戦無敗のクルーザー級ボクサーで、15万ドルのマネジメント契約に署名したばかりであり、ESPNでの試合もすでに決まっていた。タナーは、友人や家族に対して金銭的な約束をしていたこと、そして試合のファイトマネーがすぐに入ってこなかったことから、後悔するような判断を下してしまったと語っている。それでも、彼が受けた判決があれほど重いものになるとは、夢にも思わなかったという。


前述の甥、ブレヨン・ゴーハムは、叔父デュークの足跡を追い、自らもリングの世界へと足を踏み入れた。ゴーハムは幼少期の多くをインディアナ州ゲーリーで叔父とともに過ごし、プロ時代の試合にはほとんど毎回立ち会っていたという。ゴーハムが珍しくいたずらをしたときの「お仕置き」は、タナーが試合の映像をもっと見せることだった。タナーが収監されたとき、ゴーハムはまだ4歳だったが、2人の絆が切れることはなかった。タナーは手紙を送り続け、ゴーハムの体重管理やロードワークの状況にも気を配っていた。


「なんというか、彼の中に何か特別なものを感じたんだ。他の子と違って、腕立て伏せをしたり、いろんなことに取り組んでいた。とにかく、普通の子じゃなかった」とタナーは語る。「彼はこの世界の中で育ってきた。そういう資質を生まれ持ってる人間って、いるだろ。」


2020年10月、ゴーハムはメキシコでキャリアを積み重ね、5戦無敗のプロボクサーとして歩んでいた。その頃、タナーはドナルド・トランプ大統領から恩赦を受け、40歳にして新たな人生のチャンスを与えられた。


「彼がいなくなる前は、まるでもう一人の父親みたいな存在だったよ。母さんはいつも俺たちを彼の家に預けてたし、祝日になると必ずうちに来てた。毎回何かしてくれるんだ」とゴーハムは語る。「だから彼がいなくなったときは、本当に辛かったよ。でも、みんなその現実を受け入れて生きていくしかなかったし、正直、誰もが彼はもう帰ってこないと思ってたんだ。でも結局、彼は帰ってきた。そして、まるで何事もなかったかのように、すぐに日常が戻ってきた。まるで彼がどこにも行ってなかったかのようにね。」


先週、タナーは息子チャールズ三世が修士号を取得する姿を見届けた。その後はテキサス州ヒューストンで行われたDAZN中継のオーバータイム・ボクシングの共同メインイベントで、ゴーハムがルイス・フェリシアーノを下す姿を観客席から見守った。皮肉にも、その勝利でゴーハムの戦績は19戦無敗となり、タナーが収監される直前と同じ記録となった。


「本当に映画みたいな感覚だったよ。俺の人生、そして家族の歴史を題材にしたら、マジで一本の映画が作れると思う。それくらい特別な夜だった」とゴーハムは語った。「試合後に彼が言ってくれたんだ。『おいチャンプ、お前、俺の戦績に並んだな。ノックアウト数は俺より多いけどな』って。あの夜は間違いなく特別だった。試合に入るときもそのことばかり考えてた。『絶対にこの試合を勝たなきゃいけない』ってね。本当に大きな瞬間だったよ。」


タナーにとって、あの試合を見届けることは、数日前に息子の卒業式を見たときと同じような感覚だった。甥のゴーハムが“コンテンダー”へと昇格した瞬間だったからだ。フェリシアーノは名門アマチュア出身で、かつてゴールデンボーイ・プロモーションズが誇る有望株として注目された存在。そんな相手とのマッチメイクは、ブレンダン・セガレスとオーバータイム陣営がゴーハムの本物ぶりを証明するために仕掛けた、攻めの選択だった。判定では3人のジャッジ全員が、ほぼすべてのラウンドをゴーハムに与える圧勝となったが、その内容は単なる一方的な試合ではなかった。しつこく食らいつき、モチベーションの高いフェリシアーノを相手に、ゴーハムは絶えず調整を重ねながら高度な戦術を駆使して対応していた。


「俺ともう一人の兄弟もボクシングをやってるけど、誰にでも言ってるんだ。『あいつは俺たち2人より上だ』って。たとえ才能の面で勝っていなくても、若いのにあれだけ謙虚で、あれだけの規律を持ってるってところが、俺たちとは違うんだ。そういうのは口先だけじゃダメなんだ。本当に心の中にそれがなきゃいけない。そしてあいつは、それを持ってるんだ。あいつにはそれがある。俺は、あいつの方が俺たちよりずっと努力家だと思ってるし、だからこそ世界チャンピオンになれるんだと信じてる。」


フェリシアーノ戦を終えて、甥ゴーハムの実力に確信を深めたのは叔父のデュークだけではなかった。この試合の解説席にはシャクール・スティーブンソンも加わっており、かつてゴーハムとスパーリングを重ねた経験を持つほか、フェリシアーノとは長年アメリカ代表チームで共に過ごしてきた仲でもあった。 試合が進むにつれ、スティーブンソンのゴーハムへの賛辞は次第に熱を帯びていった。ジムでその成長を間近に見てきたゴーハムが、まさに“覚醒の瞬間”とも言えるパフォーマンスを披露するのを目の当たりにしながら、スティーブンソンの顔には自然と笑みが浮かんでいた。


「みんなに知ってほしい。今見ているのは、未来の世界チャンピオンだ」とスティーブンソンは試合の8ラウンド頃に語り、特にゴーハムのインテリジェンスとタイミングの良さを称賛した。


スティーブンソンのようなリングの天才を唸らせるほどの巧みさは、本来であれば長年のアマチュア経験と、注目を集めながら段階的に格上と戦うプロセスを通じて培われるものだ。しかし、ゴーハムにはそのどちらも与えられてこなかった。アマチュアとしてのキャリアは約60戦で一区切りとなり、プロとしての成長は、メキシコでの無名時代の連戦や、過酷なマッチメイクで知られるRed Owl BoxingやOvertimeといったシリーズでのタフな試合を通じて築かれてきた。


ゴーハムは、派手な設備や名声のあるジムに所属しているわけではない。彼が拠点とするのは、テキサス州ベイタウンにあるロペス・ボクシング。メキシコ料理店「ボカネグラズ・キッチン」の隣にある、ガレージを改装したジムだ。スター選手こそいないが、ベテランのフアン・ロペス・トレーナーの指導のもと、ファビアン・ロペスやダリエル・デュケーヌといった若手有望株が台頭し始めており、謙虚な姿勢と、皆が誰かより何かに秀でているという相互成長の文化が根付いていると、ゴーハムは語っている。


ゴーハムは最近、オーバータイムとプロモーション契約を結んだ。同団体には、オーシェイ・ジョーンズとティアラ・ブラウンという2人の女子世界王者が所属しており、ゴーハムは男子選手の中では世界タイトルに最も近い存在と見られている。


「そういう『ステップアップ』の試合があったからこそ、スキル的にもディフェンスや我慢強さの面でも成長できたと思う。どの試合も自分を一段ずつ引き上げてくれた感じがして、今の自分がある。コーチは常に適切なタイミングで、適切な相手を用意してくれた。今のフェリシアーノと8試合前の自分が戦ってたら、正直、勝てなかったかもしれない」とゴーハムは語った。「あの試合の数々を受けてきたからこそ、今の自分があると思ってる。あの当時だったら、あの冷静さやリングIQはまだなかったかもしれない。だから、本当にすべてはタイミングなんだよ。俺はただ、この地球上で一番強い相手たちと戦いたい。そしてボクシングというスポーツの中で、自分の爪痕を残したい。世界中のどんな相手とでも渡り合える自信はあるんだ。」


タナー自身も、甥ゴーハムを通じて夢を託すだけでなく、まだ自らのボクシングの夢を追い続けている。地元ゲーリーでのカムバック戦は長年の夢だが、最近ではさらにスケールの大きい構想も抱いている。敬愛するヒーローの一人であり、親交もあるロイ・ジョーンズ・ジュニアとの対戦、あるいはジェイク・ポールとの一戦を望んでいるという。


ブレヨンの今後について、彼自身と叔父タナーは、それぞれ別々に語ったにもかかわらず、まったく同じ考えを口にしていた。


「今こそステップアップの時だって、はっきり感じてるよ。たとえば“ピットブル”・クルスやローリー・ロメロみたいな選手。そういうタイプの相手と戦う準備はもうできてる。そこからさらにレベルアップしていくつもりだ」とゴーハムは語った。


幼少期においてゴーハムに多大な影響を与えたタナーだが、今では甥の成功が、タナー自身のボクシングへの情熱を支える大きな原動力となっている。自らの夢を諦めずに追い続けるうえで、ゴーハムの姿が力を与えてくれているのだ。


「彼は本来なら潰されてもおかしくないような厳しい環境から這い上がってきた。でも、それが逆に彼をより強く、より素晴らしい人間にしたんだ。そこが俺が一番好きなところだよ。一度も文句を言わなかったし、いつも笑顔を絶やさずに努力を続けてる。本当に、時々こっちが感情的になっちまうくらいだ」とタナーは語った。


タナーは夢のシナリオとして、自身のカムバック戦とゴーハムの世界タイトル挑戦が同じ夜に実現することを願っている。それは一見すると非現実的に聞こえるかもしれない。だが、すでに“映画のような”人生を歩んできたこの家族にとって、不可能だと言い切れることなどあるだろうか。何度も“不可能”を現実にしてきた彼らにとって、その夢もまた、きっと手の届くところにある。


「それは本当に実現できると思ってる」とタナーは語った。「一緒にトレーニングキャンプに入って、俺が彼に色々教えたり、逆に彼から学ぶこともある。彼が俺を鼓舞して、俺も彼を励ます。そして一緒にリングに上がって、最高の時間を過ごすんだ。」

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