歴代の名ボクサーたちが見守る中、
ブランドン・ムーアはキャリア最大の勝利を掴んだ。
6月6日、インターナショナル・ボクシング・ホール・オブ・フェーム・ウィークエンドのメインイベントとして行われた試合で、ブランドン・ムーアはニューヨーク州ヴェローナのターニング・ストーン・カジノ&リゾートにて、スタンリー・ライトに5回終了時のユナニマス・テクニカル判定で勝利した。この勝利により、ムーア(18勝1敗、10KO)はIBF USAヘビー級王座を防衛するとともに、ライト(14勝1敗、11KO)にとって初の敗北を与えた。
マニー・パッキャオやマイケル・ナンが殿堂入りを果たした週末に、インターナショナル・ボクシング・ホール・オブ・フェームの興行でメインを務めたことで、フロリダ州レイクランド出身のブランドン・ムーアは、その舞台の重みを肌で感じ、自身の夢の一端を実現することができた。
「トップクラスのレジェンドたちがその場にいて、自分の試合を見て評価するというプレッシャーは少しあったよ」とムーアは
『ザ・リング・マガジン』に語った。「本当に非現実的だった。夢が叶った瞬間だったよ。」
31歳のムーアは、第2ラウンドの終盤にハイライト級のノックアウトを決めかけた。右ストレートをヒットさせた直後、左フック、さらに2発の右ストレートを連打し、スタンリー・ライトをまとめてキャンバスに沈めた。ライトはふらつきながらも立ち上がり、マーク・ネルソン主審のカウントをギリギリでクリア。再開の構えが整った瞬間、ラウンド終了のゴングが鳴り響いた。
「うちのコーチはいつも“パンチは雨のように流れるように打て、間を空けるな”って言ってるんだ」とムーアは語った。「あのときの2発のジャブは“探り”のジャブだった。強く打ったわけじゃなくて、タイミングを測るために出したんだ。そこに右ストレートを合わせて、左フック、さらにまた右ストレートを重ねた。もしあの最後の左フックまで当たってたら、あいつは完全に沈んでたと思うよ。」
ムーアはさらにこう言い加えた。「本当なら2ラウンドでノックアウトしてたはずなんだ。それが起きるべき展開だった。3ラウンドの終盤に仕留めにいこうとしてたけど、あいつが頭突きしてきたんだよ。」
第3ラウンド開始とともにムーアは積極的に攻めに出たが、ライトは第2ラウンドの終盤から完全に回復していた。それでも、身長6フィート5インチ(約196cm)のムーアは再び試合の主導権を握ろうとしていた。しかし、その過程でライトと偶然のバッティングが発生し、ムーアの右目の上に深いカットが生じた。その後も出血は止まらず、2ラウンドが経過した時点で右目に流れ込む血により試合は中断。バッティングによる偶発的な負傷と判断され、試合はスコアカードによる判定に委ねられた。
ジャッジのドン・アッカーマンとドン・トレラはともに50-44を、エリック・マルリンスキーは49-45をつけ、ムーアの勝利となった。
「俺は戦士だ」とムーアは語った。「どんな状況でも戦い抜く覚悟はある。でも、あのカットは確かに影響した。右目がほとんど見えなくなって、動きが鈍くなったのは事実だ。」
期待された展開とは異なる終幕となったものの、ムーアはトレーナーのチャールズ・ウィッタカーと臨む2戦目を経て、自身の成長を実感しているという。そして今は、自分の持つポテンシャルのほんの一端に過ぎない部分しかまだ発揮していないと感じている。
「まだ学んでいる途中なんだ」とムーアは語った。「実戦の中で成長しているところさ。すべてを正しくこなす感覚をまだ掴んでいる段階。この試合を通じて、コーチたちの言っていることを信じられるようになった。スカイラー・レイシー戦がウィッタカーと組んでの初戦だった。そして今回のスタンリー・ライト戦で、自分の進歩をはっきり実感できたんだ。『俺、確実に良くなってるじゃん』ってね。だから今はもっと学ぶのが楽しみだし、早くジムに戻って次の試合に向けてさらに仕上げていきたいと思ってる。」
フロリダ州レイクランドを拠点とするヘビー級のムーアは、次にリングに上がるときには、より大きな試合を見据えている。なかでも注目されるのが、
ジャレッド・アンダーソンとの対戦だ。このカードはまさに“ふさわしい一戦”と言えるだろう。
ムーアはスタンリー・ライト戦後、ジャレッド・アンダーソンへの対戦要求を口にした。もし両者が実現すれば、それが初の対戦というわけではない。実は2021年3月27日、両者はスパーリングでリングを共有しており、そのセッションは非常にヒートアップした内容だったという。ムーアは、そのスパーでは自身がアンダーソンを上回っていたと言い、最終的には両者を引き離さなければならないほどの緊張状態にまで発展した。
アンダーソン(18勝1敗、15KO)は、25歳の有望なヘビー級プロスペクトだが、2024年8月3日にマーティン・バコレに5回TKOで敗れ、キャリア初黒星を喫した。その後は今年2月14日にマリオス・コリアスとの試合でユナニマス判定勝ちを収め、再起を図っている。
「マーティン・バコレに負ける前、あいつとスパーリングしたときがあって、ある時点では俺が完全に優勢だった。そしたら彼がちょっとキレて、ジム中の人間に怒り出して、ちょっとした揉め事になったんだ」とムーアは語った。「あいつはアメリカでトップクラスのヘビー級だし、俺も同じくその一人。ファンが見たいと思う試合になるはずだよ。」
「俺たちは実力的には互角だと思ってる。あとは、どっちのハートが強いかだけが勝負の分かれ目だ。」
ムーアが対戦を希望しているのはアンダーソンだけではない。近い将来、海の向こうのトップヘビー級たちとの対戦も視野に入れており、その中には無敗のWBA暫定ヘビー級王者ファビオ・ウォードリーや、“ボクシング界最高のプロスペクト”とも称されるモーゼス・イタウマの名前も挙がっている。
誰が目の前に立とうとも、ムーアは自分がヘビー級トップ戦線にふさわしい存在だと信じている。現在のヘビー級は変革期を迎えており、元王者デオンテイ・ワイルダーやアンソニー・ジョシュア、そして現統一ヘビー級王者
オレクサンドル・ウシクがキャリアの終盤に差しかかり、タイソン・フューリーも完全引退の可能性がささやかれている。そうした中で、ムーアは新世代を担う存在としての自信を強く持っている。
そしてもし彼の望みが叶うなら、ムーアは次世代のヘビー級を担う存在として、数多くの新鋭たちとともにその座を勝ち取るべく名乗りを上げるだろう。ヘビー級の“次なる主役”をめぐる戦いの中で、自らの地位を確立しようとしている。
「次の試合では、またとんでもない成長を見せることになるよ」とムーアは語った。「次はクレイジーなノックアウトになるって断言する。スタンリーをどう倒したか見ただろ? あれは間違いなくKOだった。」
「マジでヤバいことになるぜ。毎日トレーニングしてるし、自分でも思うんだ。俺は“兵器”なんだよ。大量破壊兵器ってやつさ。」