キーショーン・デービスは、デニス・ベリンチクを「徹底的に叩きのめす」と豪語しているが、それはいつものことだ。相手がリングに立つボクサーだろうと、ゴジラだろうと関係ない。デービスは常に自分が相手を圧倒すると信じている。
そして今、デービスの視線の先にいるのがデニス・ベリンチクだ。紙の上のデータだけを見れば、デービスの挑発が現実のものになる理由もうなずける。
同じ階級で戦うとはいえ、デービス(12勝無敗、8KO)のほうが体格的には上回っているように見える。さらに、彼は現WBO王者ベリンチクよりも11歳若い。最近、The Ringライト級ランキング5位のデービスがニューヨークの街を歩いていると、チームメンバーたちは彼を盛り上げるように「新チャンピオン!」や「楽勝だ!」と繰り返し声を上げていた。とはいえ、「楽勝」とまではいかないと考えているメンバーも、実はチーム内にいる。
キーショーン・デービスのトレーナーであるブライアン“ボーマック”・マッキンタイアは、普段は試合前の口撃で誰よりも先陣を切るタイプだ。今回も選手を鼓舞する姿が目立ったが、その合間には、どこか心配そうな表情ものぞかせていた。ただ、それはデービスが負けると考えているわけではない。まったくそんなことはない。 オリンピック銀メダリストであるデービスに対するボーマックの信頼は、もはや自信を通り越して傲慢にも近い。しかし、そんな彼がなぜ曖昧な表情を見せたのか。それは、デービスの実力を100%信じている一方で、ベリンチク(19勝無敗、9KO)が決して侮れない相手だということを理解しているからだ。
ボーマックは最近の「ザ・リング・マガジン」のインタビューで、「彼が王者なのには理由がある。何もせずにその座に就いたわけじゃない。チャンピオンになるには、それなりの実力があるってことさ。」と語った。
ベリンチクは現在の地位を築く前に、元複数階級制覇王者エマヌエル・ナバレッテとの対戦を通して実力を証明することを求められた。
多くの予想では敗北が濃厚と見られていた中、36歳のベリンチクは見事なパフォーマンスを見せた。必要な場面ではアウトボクシングを展開し、ロープ際に追い込まれた際にはインファイトにも対応。変幻自在な戦術に、ナバレッテは最後まで対応できなかった。
その勝利と、これまでに積み上げてきた実績を踏まえ、ボーマックもベリンチクが本物の実力者であることを認めざるを得なくなった。
「彼の実力は認めるべきだよ。」