数年前に「テレンス・クロフォードがカネロ・アルバレスに勝てるか?」と聞かれても、ボブ・アラムは真剣に取り合わなかっただろう。
当時のアルバレスは、ボクシング界でパウンド・フォー・パウンド最強と広く見なされていた。クロフォードも多くのランキングでそれに次ぐ存在だったが、ウェルター級で戦っており、アルバレスとは実に3階級の差があった。
その頃アラムはクロフォードをプロモートしていたが、それでも、超一流の実力と鉄のあご、そして破壊的なパワーを備えたアルバレスに勝てるとは思っていなかった。しかし、クロフォード(41勝無敗、31KO)の成長ぶりとアルバレスの衰えを見た今、アラムは
9月13日にラスベガスのアレジアント・スタジアムで行われる168ポンド・12回戦のタイトル戦で、クロフォードが勝つ本命だと考えている。実際、アラムは、Netflixが全世界3億人以上の加入者に向けて配信するこのメインイベントで、クロフォードが説得力ある勝利を収めると予想している。
「クロフォードが大差判定で勝つと思うよ」とアラムは『ザ・リング・マガジン』に語った。「KOか大差判定のどちらかだろうが、カネロが守りに入るはずだから、大差判定の方が可能性は高い。人々は、カネロがどれだけ衰えているかを分かっていない。ウィリアム・スクールとの前戦だけじゃなく、その前の試合も含めてね。」
メキシコの
カネロ・アルバレス(63勝2敗2分、39KO)が敗れたのは、2013年9月にラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで当時23歳でフロイド・メイウェザーに完封された試合以来、
ドミトリー・ビボルとの一戦だけである。ビボルはその後ライトヘビー級の4団体統一王者となっており、アルバレスの公式な敗北はいずれも21世紀を代表する名ボクサーに喫したものだ。
アラムが近年の試合を見てきた限り、
クロフォードのように頭脳的で多彩なスタイルを持つ相手と対峙することは、アルバレスにとって大きな問題になるだろう。
「クロフォードは、より質の高い相手と戦ってきたし、カネロを倒すための武器を持っている」とアラムは語った。「クロフォードが持つ最大の強みは、他の選手たちが対処できない“完全な両利き”であることだ。カネロ陣営は試合に向けて右利きのスパーリングパートナーを用意するだろうが、クロフォードは最初こそ右構えで戦うかもしれないが、最終的にはサウスポーに切り替えてくる。そうなったとき、カネロはどう対処していいか分からなくなるだろう。」
アルバレスはキャリア初期、特に
オースティン・トラウトや
エリスランディ・ララといったサウスポー相手に苦戦した経験がある。
元スーパーウェルター級、ミドル級、ライトヘビー級王者のアルバレスは、トラウトとララには判定勝ちを収めている。その後、2015年5月にヒューストンで行われた試合では、同じくサウスポーのジェームズ・カークランドを3回KOで下した。
その後、グアダラハラ出身のアルバレスは右構えの相手と11連戦を重ね、2021年5月にはテキサス州アーリントンで行われた試合で、イギリスのサウスポー、
ビリー・ジョー・サンダースを8回終了時にストップした。当時93歳のアラムは、もしその頃にクロフォード対カネロの話があったなら、カネロ有利と見ていたと認めている。
「そのときなら、クロフォードにとって荷が重すぎると言っていただろうね」とアラムは語った。「でも、今のカネロはあの頃のカネロではないし、今のクロフォードも昔のクロフォードとは違う。クロフォードは今や完成されたファイターだよ。」
Keith Idec は『ザ・リング・マガジン』の上級記者兼コラムニスト。X(旧Twitter)では @idecboxing で連絡可能。