ベン・ウィッテカーは、マッチルーム初戦で
ベンヤミン・ガヴァジ相手に“今年屈指のKO”を決めて存在感を示す。
ボクサーを離れて新天地を求める決断をした28歳は、4月以来となる試合でわずか135秒で決着をつけ、あっという間に仕事を終わらせる。
そして、1度しか負けていないドイツ人相手に生まれたフィニッシュは、今後数日で拡散されるであろう“ハイライト級KO”だった。
ウィッテカーは言う。「ああいう華やかな入場をするなら、それに見合うものを見せなきゃいけない。それをやっただけだ。
“アピールしろ”なんてプレッシャーは感じなかった。アンディ・リーは、スパーリングでやっていることをそのまま出せばいいと言っていた。──くそ、俺、めっちゃ良く見えたな。」
ガヴァジは前日会見で“ウィッテカーなんて特別じゃない”と言い張っていたが、試合前の役割はしっかり果たしていた。相手についてウィッテカー(ウェスト・ブロムウィッチ出身)はこう言う。
「彼は根性ある若い選手だった。目を見れば分かったよ。会見で彼が言った一言で、“ああ、こいつは隙を見せたな”と思った。『失うものは何もない』って言ってたけど、俺には失うものが全部あるんだ。
“俺には20戦して1敗しかない、人生を変えに来た”って感じで来たけど、俺が何者かってことをしっかり見せてやった。」
トッテナムでクリス・ユーバンクJr.の入場を50セントが盛り上げた2週間後、今回はグライム界のレジェンド、ディジー・ラスカルがラップしながら、バーミンガムのナショナル・エキシビション・センターでウィッテカーをリングへと導いた。
デビューから10戦をボクサー(Boxxer)で過ごしたウィッテカーにとって、マッチルームと長期プロモーション契約を結んでからの初戦。対戦相手のガヴァジは、2018年11月のデビュー戦で負けて以降、19連勝してきた強敵だ。
だが、開始からわずか2分ちょっとで、ガヴァジはキャリアで2度目の敗北──7年ぶりの黒星を喫することになる。
ウィッテカーが“急いでアピールしようとしていた”わけでもない。ただ、彼が本気で手をまとめ始めた瞬間から、ガヴァジにとっては速さもパワーもレベルが違いすぎた。
試合開始から1分少しで最初のダウンを奪い、ガヴァジは立ち上がったものの、勝敗はもう見えていた。
相手はまるで“こんなパンチ、今まで感じたことがない”という表情で、その数秒後には凄まじいKOで沈む。抱きつこうとしたガヴァジをかわし、ウィッテカーはボディへの右、そしてフィニッシュとなる左フックと右のコンビネーションを叩き込み、試合を決めた。ストップの正式タイムは1ラウンド2分15秒。
新プロモーターのエディ・ハーンはこう語る。
「言えることは一つ、ただ“ワオ”だ。アリーナを盛り上げる選手はいるけど、大事なのはリングで何をするかだ。
彼には、ミッドランズや英国のために世界王者を獲れるだけの才能がある。彼は善い心を持った男で、毎日ベストを尽くすために努力している。」
ハーンは今週『ザ・リング』に対し、ウィッテカー(10勝0敗1分、7KO)が世界タイトル挑戦まであと3〜5戦ほどの位置にいると言う。
彼は続けて言う。「俺たちはビボル、ベテルビエフ、ベナビデス──その全員を突破すると思う。この男は“ワオ”だ。この国のみんなが彼を支えるべきだ。
俺たちは彼を世界中に連れていく。アメリカはベン・ウィッテカーを求めている。彼にはすべてが揃っている。」
セミファイナルでは、トム・カウリングがダウンから立ち上がり、無敗だったアーロン・ボーウェンにスプリットデシジョンで勝利し、空位のミッドランズ地区ミドル級王座を獲得する。
第5ラウンド開始1分過ぎ、強烈な右を食らってカウリングは倒れるが、なんとか立ち上がりカウントをクリアする。
その後のラウンドも、ボーウェンがストップを狙って攻め込む中、打ち返して気持ちで折れずに耐え抜く。
最終的にジャッジ2者が95-94でカウリング、もう1人が96-93で支持し、この“小さな名勝負”の末に彼はベルトを手にした。