テレビプロデューサー、ディレクター、プロダクションマネージャー、そして技術者として活躍してきたマーティ・コーウィンが、一時的にカメラを置き、キーボードを手に取った。彼が執筆した「
Arum and King: Six Decades of Boxing Gold(アラムとキング – 6 0年のボクシング黄金時代)」は、ボクシング界の殿堂入りプロモーターであるボブ・アラムとドン・キングの両方で部門責任者を務めた唯一の人物による新書籍である。
コーウィンは1993年から1999年までドン・キングのTVプロダクション部門を統括し、1999年から現在までボブ・アラムのトップランクで同じ役職を務めている。
全232ページのこの書籍は、コーウィンの個人的な視点やエピソードを通じて、アラムとキングのボクシング界での歩みを描く。出版社はRowman & Littlefieldで、
ハードカバー版は32ドルで販売されている。
コーウィンは『ザ・リング』誌のインタビューで、「この本はアラムとキング、そしてマイク・タイソンのキャリアを讃えるものだ」と述べ、興味深い逸話を多数収録していることを明かした。
「このプロジェクトを始めたのは、記憶が薄れる前にエピソードを書き残しておきたかったからだ」とコーウィンは語る。「それが最初の動機だった。驚いたのは、記憶がどんどん湧き上がってきたことだった。もちろん、彼ら二人の物議を醸した出来事は知っている。でも、彼らが成し遂げた偉業には本当に敬意を抱いている。それがこの本の焦点になっている。テレビプロデューサーの視点から見ると、それぞれ異なる側面がある」
コーウィンはボクシング業界に入る前、ワシントン・ブレッツ(現ワシントン・ウィザーズ)、ワシントン・キャピタルズ、ボルチモア・オリオールズの試合を年間平均110試合制作し、10年間バイアコムで働いていた。
彼のキャリアの転機は1993年に訪れた。TVPプロダクションズからの一本の電話が、彼の人生とキャリアを一変させることとなった。
「『君がやっていることをできる人が必要なんだ。ライブスポーツの制作ができて、色んな役割をこなせる人を探している』と言われた。彼らは誰のための仕事なのか教えてくれなかった。でも、それを知るために面接に行ったんだ。」
実際、その電話の主はドン・キング・プロダクションズだった。
ボクシングには詳しくなかったコーウィンだったが、キャリアチェンジには前向きだった。
「ドン(・キング)は俺を魅了し、お世辞を言い、『君をここに迎えるには何が必要か?』と聞いてきた」とコーウィンは振り返る。
コーウィンは、相手が断るだろうと思いながら**「とんでもない高額な給料」を提示した。しかしキングは握手を交わし、スタッフに「マーティを明日の便でメキシコへ行かせろ」と指示**した。
翌日、コーウィンはメキシコシティのモヌメンタル・プラサ・デ・トロス(闘牛場)で行われたマイケル・カルバハル vs. ウンベルト・ゴンザレスのライトフライ級タイトルマッチの現場に立っていた。
ボクシング界の文化衝撃 – アラムとキングの働きぶり
「そこから、ボクシング界の型破りなキャラクターたちを目の当たりにする日々が始まった」とコーウィンは語る。
「ドン・キングは俺が今まで出会った中で最も賢い男だ」とコーウィンは言う。「彼と実際に会い、仕事をすると、それまでのイメージとは全く違っていたのに驚いた。彼は24時間働き続ける男だった。『俺は刑務所を出てから一日も休んでいないから成功したんだ』と彼は言っていたよ。」
「アラムも同じように今でも信じられないくらい働き続けている。彼らの仕事ぶりを見ていると、本当にすごいとしか言えない。」
コーウィンは、メキシコでのイベントの後、すぐにインディアナポリスの刑務所へ向かい、レイプ事件の有罪判決を受けたマイク・タイソンの復帰戦に向けたテレビインタビューの準備を行った。
「ピーター・マクニーリー戦からイベンダー・ホリフィールド戦まで、タイソンの試合をすべて制作した。それらはまるで『ミニ・スーパーボウル』のようなイベントだったよ」とコーウィンは語る。
ドン・キングからの解雇、そしてトップランクへ
しかし、コーウィンのドン・キングとの関係は1999年に突然終わりを迎える。彼は友人の頼みで、オスカー・デ・ラ・ホーヤ vs. アイク・クォーティ戦(トップランク主催)の放送を手伝った。
彼は「誰にもバレなければ問題ない」と考えていたが、結局キングに知られてしまい、解雇された。
「トップランク側は『それなら君がうちの全てのイベントを担当してくれ』と言ってきた。それ以来、26年間トップランクの仕事を続けているよ」とコーウィンは語る。
アラムとキングの違い
「アラムとキングは同じことを別のやり方でやっていた。彼らは友人ではなく、本当のライバルだった。でも、ビジネスとして成立すれば、彼らは一緒に仕事をした。」
「『ボブとドンの違いは何か?』とよく聞かれる。ドンはすべてを自分で仕切るタイプだった。一方で、ボブはトッド・デュボエフ、ブラッド・ジェイコブス、カール・モレッティ、ブルース・トランプラー、ブラッド・グッドマンといった優秀なスタッフに会社の未来を任せ、彼らがそれぞれの役割を果たせる環境を作っている。彼らは自分の仕事を全うし、ボブがしっかり支えているんだ。」
最後に – 「もう二度とアラムやキングのようなプロモーターは現れない」
コーウィンは、ニューヨークでの試合週の忙しさから一時的に離れ、WBOライト級新王者となったキーショーン・デービスの試合を見届けた後、『ザ・リング』誌とのインタビューに応じた。
「プロモーターという仕事は、想像を絶するほど難しい仕事だ」とコーウィンは語る。「アラムやキングのようなプロモーターが再び現れることは、もう二度とないだろう。」
マノウク・アコピアンは『ザ・リング』誌のリードライター。X(旧Twitter)およびInstagramで @ManoukAkopyan にて連絡可能。