イフタール(ラマダン中の日没後の食事)まで残りわずかという時間、アダム・アジムはロンドンのオックスフォード・ストリートから数百メートル離れたレバノン料理店に腰を下ろし、2025年後半の計画について語ってくれた。
まだ正式な試合日は決まっていないにもかかわらず、23歳のアジムはすでに140ポンド(スーパーライト級)のリミット近くまで体を絞っている。ラマダン中のトレーニングを完全に自分のものにした結果だ。
多くの選手が“聖なる月”にトレーニングを緩める中、アジムはむしろその逆。7月の復帰戦に向けて、理想的な準備ができていると自信をのぞかせる。
「断食中もずっとトレーニングしてました」とアジムは『The Ring』に語る。「日没前に練習する方法も試したけど、自分的には朝10時か11時くらいのトレーニングの方がしっくりきますね」
「もちろん、午後6時過ぎまで食べ物も水も口にできないわけだから、練習中もその直後も何も摂れない。でも正直に言えば、そこはただ耐えるだけです。きついけど、モハメド・アリの言葉を思い出すんですよ――『痛みがあるってことは、それが効いてる証拠だ』ってね」
「だから、スフール(断食前の朝食)の時間に炭水化物をしっかり摂っておくようにしてます。昨夜はだいたい午前4時くらいだったので、3時半に起きて、食事と水分、それに電解質を摂りました。それからまた寝て、朝9時くらいに起きて、11時からシェーン(・マグウィガン)と練習するって感じです」
「多くの人が“断食明けにドカ食いするから太る”って言うけど、僕の場合はむしろ逆で、ラマダン中は体脂肪が落ちるし、体のデトックスにもなると思ってます。それに何より、メンタル面の強化にもすごく役立ちますね」
“アサシン”の異名を持つアダム・アジムは、これまでのキャリアでその精神力の強さを十分に証明してきた。順調そのもののプロ戦績は13勝無敗(10KO)。中でも、今年2月に元世界王者セルゲイ・リピネッツと対戦した試合は、若きアジムにとって「真価を問われる試練」と位置づけられていた。
だが、もしそれが本当に“試練”だったとするなら、アジムはそれを完璧な内容で乗り越えてみせた。試合を通じて正確無比なパンチを打ち込み続け、9ラウンドTKOで堂々の勝利。疑う余地のない圧巻のパフォーマンスだった。
この勝利により、アジムは初めて主要団体のトップ15にランクイン。WBCの最新ランキングでは12位に浮上している。現在、チーム・アジムは次なるステップへ向けた“意味のある対戦相手”を模索中であり、本人も2026年中の世界タイトル挑戦を強く意識している。
「今年は3試合を目標にしてます」とアジムは語る。ちょうどそのタイミングで、ロンドンの〈ヤラ・ヤラ・レバニーズ・キッチン〉のスタッフが、イフタールに向けて次々と料理を彼のテーブルに運び始めた。
「2月に1試合やって、次はおそらく7月頃、そして最後は10月になると思います。それが実現すれば、僕にとっては最高の一年になりますね。
そうなれば、2026年の世界タイトル獲得に向けて完璧なポジションを作れるはず。目標は、複数の世界タイトルを獲ること。そして、自分の名前を世界のトップに並べて、パウンド・フォー・パウンドでもトップ10に入ること。その過程で、イギリス国内のすべてのライバルを“粉砕”するのも含まれてます」
現在のランキングに基づけば、アダム・アジムはイギリス国内のスーパーライト級で第3位の位置につけている。ダルトン・スミスがWBCの指名挑戦者としてトップに立ち、30勝2敗(13KO)のジャック・キャテラルは、アーノルド・バルボサに敗れたものの、WBCおよびWBOで依然として4位にランクインしている。一方で、以前から噂されていたハーレム・ユーバンクとの一戦は、ユーバンクが現在ウェルター級で活動していることから、実現の可能性は薄れているようだ。
「今挙げた名前たちとも、いずれ必ずやり合う時が来ますよ」とアジムは付け加える。
「ハーレム・ユーバンクには、こっちから何度もオファーを出してきたけど、正直あいつはこの試合を望んでないと感じてます。本気なら、俺のマネージャーに電話するだけで済む話です。俺は彼に週7で勝てる自信があるし、日曜には2回勝てますよ」