アブドゥラ・メイソンが、11か月前に自ら乗り越えた逆境を必要としていたのかもしれない。
彼のプロ初期15戦のうち、判定まで進んだのはわずか2試合のみだった。ボクシング界で最も有望視される若手の一人であるメイソンは、それまで13人の相手をノックアウトしてきたが、ほとんど抵抗を受けることなく勝ち進んでいた。そんな彼が試練を迎えたのは、昨年11月8日、バージニア州ノーフォークのスコープ・アリーナでヨハン・バスケスと対戦したときだった。
試合開始からわずか48秒、バスケスの左フックが衝撃的にメイソンをキャンバスへと沈めた。その瞬間、彼は父でありトレーナーでもあるヴァリアント・メイソンから教わってきたことの多くを実践する必要に迫られた。冷静さを取り戻したクリーブランド出身のメイソンは、わずか33秒後に強烈な左アッパーでバスケスをダウンさせる。しかしその直後、ドミニカのベテランであるバスケスが再び左フックをヒットさせ、ラウンド残り1分3秒のところでメイソンは再度ダウンを喫した。
メイソンは2度目のダウンからもすぐに立ち上がり、第1ラウンド終了後のインターバルで冷静さを取り戻した。強打のサウスポーである彼は第2ラウンド、正確に放った左ボディショットでバスケスの動きを一瞬止め、1分59秒でノックアウト勝利を収めた。
メイソン(19勝0敗、17KO)は最近出演した番組『インサイド・ザ・リング』で、その夜に得た教訓をどのように生かし、来月イギリスの
サム・ノークスとの初の世界タイトル戦へたどり着いたかを振り返った。21歳のライト級コンテンダーである彼は、バスケス戦での逆転勝利以降、3試合連続でKOまたはTKO勝利を挙げている。
「ダウンは自分のボクシングを磨いてくれたと思う。あの経験が、自分にはまだ成長の余地があると気づかせてくれた」とメイソンは語り、共演のマックス・ケラーマン、マイク・コッピンジャー、リーショーン・マッコイにこう続けた。
「とにかくコーナーの指示を聞いて、焦らず、相手をよく見ること。それを学んだ試合だった。プロのリングでは、誰に対しても何が起きるかわからない。特に相手がパンチャーなら、どんな一撃でもパワーパンチになり得る。だから常に目を離さず、集中し続けることが大事なんだ。」
メイソンが重視するディフェンス面での集中力は、11月22日にサウジアラビア・リヤドのANBアリーナで対戦する強打者サム・ノークス(17勝0敗、15KO)との一戦でも大いに役立つはずだ。この12ラウンド戦は、空位のWBOライト級王座を懸けて行われる「
ザ・リングIV:ナイト・オブ・チャンピオンズ」の一部として組まれており、DAZNペイ・パー・ビューで米国(59.99ドル)および英国(24.99ポンド)で配信される。
ノークスのKO率(88%)はメイソンのKO率(89%)とほぼ同等だが、メイソンは今や「ダウンしたときにどう反応するか」を“想像”ではなく“経験”として理解している。バスケス(26勝6敗、21KO)と対戦する前、メイソンはアマチュアとプロを合わせた94戦の中で一度もダウンしたことがなかった。
「最初のダウンは、ただ経験不足が原因だったと思う」とメイソンは振り返る。「その試合で学んだことは、全部これまでに聞いていたことだし、自分でもわかっていたことなんだ。でも、正直に言えば、実際に体験して初めて理解できた。焦らず、相手から目を離さないことの大切さをね。結局のところ、あれは自分の落ち着きを強化してくれた経験だった。
自分はまだ若いけれど、ボクシングの中でたくさんの引き出しを持っているし、あの経験がそれをさらに増やしてくれた。だからこれからは上に行くだけだよ。リングに上がるたびに、どんどん強くなっているんだ。」
Keith Idecは『ザ・リング』誌の上級ライター兼コラムニスト。Xでは@idecboxing
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